前では港湾へは10%以下であったのに比べ19%が港湾へ、58%が高速道路へ配分された。海運へは民間部門が融資していくものとして、公的資金はあまり向けられなかった。にもかかわらず、1976年にはフィリピンでもコンテナリゼーションが開始された。
当時、一般的にほとんどの公共港湾は、自然の防護がある場所に立地しており波などによる問題は少ないものの、埋没は多くの港湾の問題であった。さらに、公共港湾の多くは手狭な作業空間や上屋、劣悪な維持管理に問題を有していた。これらの問題点が絡み合って混雑を引きおこしており、そのため貨物の移動がひどく制限されたり、荷役が遅れたり、また船舶の係留時間が長くなるという問題点を抱えていた。
初めての外国資金による主要な港湾インフラ投資プロジェクトは1973年に開始され、取扱貨物量上位10港がカバーされることになった。引き続き世銀借款で主要港湾の改良・改修が進められ、第4次借款(1978年)からは中規模港湾への投資を開始した。この改良・改修事業及びアジア開発銀行によるマニラ港の改良・改修により、現在まででとりあえず最低限必要な投資を一巡させたところといえる。
3.4.2 新フィリピン中期開発計画(1993〜1998年)
新中期開発計画のマクロ経済上の目的は、生産と雇用の持続的成長、物価の安定及び健全な国際収支である。実質GNPの成長率を計画期間に渡って7.5%とし、投資と輸出を2桁の増加率で成長を図ることにより、全体の成長率を1993年の4.5%から1998年には10%に増大させるとしている。
このようなマクロ経済状態を達成するためインフラ部門では、地方政府や非政府組織(NGO)、BOT制度を通しての民間団体の参加、民営化・規制緩和・地方分権化等の効率化といった流れをさらに推進すべく、インフラ施設の供給、運用、維持に当たっては、BOT及びその関連施策に限定することなく、幅広い民間部門による投資をさらに活発化させていくとした上で1993年から1998年までの6年間で6,612億ペソ(約2兆7千億円)の投資を計画している。この中で最も投資の重点となっている分野はエネルギーであるが本分野に次いで多くの投資を予定しているのが交通分野である。全体の約3割が当分野向けの投資である。港湾分野では96の国有港湾、300の地方港湾・漁港を建設改良・改修する(アジア開発銀行によるマニラ港の改修、世界銀行によるセブ港の改修、イロイロ港の拡張等が含まれる)計画やRo-Ro施設を6ヶ所で整備する計画が盛り込まれている。
3.4.3 フラッグシッププロジェクト
1993年末よりラモス政権は中期開発計画に基づく将来計画をフィリピン2000年ビジョンと呼ぶと共にそれに合わせ、本ビジョンを実現するためのプロジェクトをフラッグシッププロジェクト(旗艦プロジェクト)として指定することとした。