日本財団 図書館


参考資料7 英国ウエールズ沖タンカー事故

 

製作 BBC(イギリス)1997年番組から

 

1. 事故の概要

 

1996年2月15日イギリス、ウエールズ南西沖で石油タンカー、シーエンプレス号が座礁し、7万5000トンの原油(エクソン・バルデイズ号事故時の約2倍の流出量)が6日間で流出した。この事故現場は、国立公園の中心部にあり過去50年間にわたり海鳥が観察されてきた特殊な場所で、原油流出の生物への影響を調べるための基礎データは揃っていた。近くのミルフォードへイブンには石油ターミナルがある。

事故当初、強風と荒波のため作業は難航し、原油流出を止める手段がなく、この時点で既に5万トンが流出した。その結果、海鳥への被害が懸念された。

「あの事故では大量の原油が流出したが、官民一体となった対応策が功を奏して被害は比較的小さくとどめられ、大惨事にならなかった(T・ルーネル、AEAテクノロジー)」という意見がある一方で、「あの事故は大惨事であり、数え切れない生物(カサガイなど)が意味もなく死んだ(J.クレモナ、フィールドスタディ協会)」という見方もあり、事故の影響について見解は分かれている。

 

2. 初期の対応(油処理剤の散布)

 

1996年2月16日、このままでは船体がおれ、最悪の事態になるという状況の下、事故直後、マスコミは岩に乗り上げた船体の処理に注目した。

一方、合同対策本部では、既に流出原油回収策を検討していた。決定権者は、英国運輸省海洋汚染対策チームのディビッド・ベッドボローである。彼は、「原油に汚染された海は時が経つにつれて、回復する。我々がすることはその回復の速度を速めることである」と言う。

デイビッド・ベッドボローは、主な選択肢は以下の3つがあるとする。

?放置する

?海で回収作業を行う

?空から油処理剤を散布する

 

事故の状況から見て、?の選択肢は今回は取るわけにはいかなかった。イギリス政府の対応策は、国内で原油流出事故を起こしたとき、いつ、いかなる場所でも実施できるものである必要がある。

そこで油処理剤(原油を分散させ、海水に溶け込ませる薬品)を先ず、散布することとした。油処理剤は使うと決めたら一刻も早く散布する必要がある。原油の中にはすぐに蒸発する揮発成分があり、時間が経つと揮発成分がぬけた原油は濃いムースのような状態になり処理剤が効かない。油処理剤を一刻も早く散布するために、イギリ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION