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5.5 バイオレメディエーション

 

(1)イタリアにおけるバイオレメディエーションの実際

イタリアでは、バイオレメディエーションは実施されていた。調査したエニリチェルケは、研究開発と問題分析を専門とする会社で、実際の施行はENIグループ内外の別会社が担当するとのことだったが、すでに10年の研究実績を持っていた。油汚染に対するバイオレメディエーションは、現実には土壌の場合が多いとのことだったが、油漏れ事故が起きたような場合には、土壌に対しても海洋に対しても、いつでもバイオレメディエーションをひとつの選択オプションとして提案できる体制が整っていた。また、内陸で起きた事故でも、河川・湖・地下水がからむ状況では、対応手段は海洋の場合と近似するという。

今回の訪問では、エニリチェルケ側の事情で、あまり細かなデータは提示されなかったが、以下のような問題解決に向けたアプローチのメソッドといくつかの事例が紹介された。

?イタリアの海洋バイオレメディエーションの実用化状況

1995年、テイレニア海のリボルノ(イタリア半島の西側中部)の沖合で大きな油漏れの事故があった。当然のことながら、初期の救急措置として海水の汲み取りなどの物理的修復が行われたが、汚染は広がった。物理的処理の後、市販のデイスパーサルが使われた。事故が起きたのは沖合だったが、海岸に近く、海岸も汚染された。ここでは、バイオレメディエーションを適用することが可能だったが、物理的処理と汚染土の除去、また、溶剤処理による海岸の洗浄が行われた。というのは、汚染地域は、保養地や観光地に隣接しており、短期間での修復が優先したため、地元当局は、時間のかかるバイオレメディエーションよりも、砂を取り替えるという物理的方法を選んだ。もちろん、コストの面では砂地の入れ替え作業よりも、バイオレメディエーションのほうが有利だったが、修復が長引けば観光業やサービス業などの地場産業が大きなダメージを受けることが予想された。

このように、(レメディエーションにどの手段が選ぶかは)、コスト、方針、パブリック・アクセプタンスのかねあいである。

?バイオレメディエーション・メソッド適用の体制

このテーマに関しては、私たちはすでに10年近く研究を続けている。そして、事故による油流出汚染と工業などによる慢性的な汚染の両方に対して、異なるバイオレメディエーション策が取れる体制ができている。イタリアにとっては、海岸汚染は、ひじょうに重要な問題である。特に、アドリア海側(半島の東側)の海岸線は、ほとんど切れ目なく観光地や保養地が続くため、石油タンカーの航行もひじょうに制限されている。また、アドリア海側には掘削用の海上プラットホームも多いが、幸い大半がガス田である。

 

 

 

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