日本財団 図書館


参考資料4 米国における法規制

 

1. 1990年Oil Pollution Actの制定

 

(1)概要

“Exxon Valdez号”事故を契機として、米国議会は、1990年Oil Pollution Actを制定し、1990年8月ブッシュ大統領により署名された。連邦政府及び業界の石油流出防止、準備体制、対応能力を拡大することを意図とした総合的な法令の制定である。

この法律は、船舶や諸施設からの石油汚染の防止及び汚染に対処するための総合的な対応、責任負担、損害賠償の管理体制の整備を目的としたものであり、船舶の建造や運転操作、乗組員の資格制度、人員配置に新規要件を設定し、石油輸送につき連邦政府の管理をかなり増加させている。また緊急計画の義務化、連邦政府対応力の強化、施行権限の範囲拡大、罰金増加、新規研究・開発プログラムを設定している。

更に、流出者側により補償されない清掃コストや損害を補足するべく10億ドルの信託基金の設定を定めている。

なお、この法律の制定は、“Exxon Valdez号”事故及びこの事故のあと1990年に相次いで発生した石油流出事故※1を契機とするものであるが、それ以前から、“Clean Water Act”,“Deepwater Port Act”,“Trans - Alaska Pipeline Authorization Act”,等の連邦法に基づく油流出対策関連規定及び州法に基づく措置、また、国際機関に於ける議論、さらに、“Comprihensive Environmental Response, Compensation, and Liability Act(CERCLA or Super-fund)”※2等の環境関連規制などを総合的に見渡した立法の必要性につきおよそ15年間議論してきていた。※3

※1

1990年2月の“American Trader号”の事故(原油400,000ガロンが、カリフォルニア沖で流出、海岸線12マイルを汚染)、1990年6月“MEGA BORG号”の事故(原油3.9百万ガロンがメキシコ湾で流出、ほとんど炎上したが40,000ガロン以上がテキサス、ルイジアナの沿岸を含む海域を汚染)

 

※2

この法律は、1970年代後半のニューヨーク州の有害廃棄物質による土壌汚染問題(“Love Canal”の汚染)等を契機として、1980年に制定されたもの。汚染者によるクリーンアップの義務づけ、汚染者不明の場合等の際のクリーンアップ費用に充当するための基金(“Super Fund”)の創設等を規定している。

 

※3

Russell V. Randle, “The Oil Pollution Act of 1990 : Its Provision, Intent, and Effects”, Environmental Law Reporter 3-91

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION