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7.2 今後の課題

 

油汚染に対するバイオレメディエーションについては、その「効果」と「安全性」及び「経済性」を考慮して実用化することが重要と考えられる。

本研究では、海浜のバイオレメディエーションの効果を油分解率の視点から、また、安全性を微生物の菌密度、栄養塩濃度の視点から検討を行った。その結果、バイオレメディエーションが効果的であることが明らかとなった。また、安全性についても上記の視点からは十分耐え得るものと考えられる。しかしながら、実用化という点で考えるならば、以下の点について更なる検討が必要と考えられる。

 

(1)更なる安全性の確認のための評価手法の確立

実用化を考える場合、パブリック・アクセプタンス(PA)の問題は、避けては通れない問題である。そのためには、海浜のバイオレメディエーションが十分安全であることを示す必要がある。

本研究においても、上述のように安全性の視点からも検討を行っているが、バイオレメディエーションの安全評価は、以下に区分して評価することが必要と考えられる。すなわち、?油流出の緊急時の安全性評価(バイオレメディエーションを行うかどうかを原油と比較して毒性が少ない場合に使うと判断する場合)と、?バイオレメディエーションの安全性評価の比較対象を、元の自然状態(生態系)としてバイオレメディエーションを行うかどうかを判断する場合である。

安全性の評価にあたっては、処理対象となる油そのものの有害性や流出直後の比較的早い段階で散布される処理剤等の有害性にも注目する必要がある(流出油は原油や石油製品(C重油等)であり、その種類にもよるが、油自体の毒性は指摘されている)。

また、バイオレメディエーション時に散布する栄養塩(窒素、リン)についても、散布量によっては、生態系に対する影響が考えられる。

従って、実際の処理にあたっては?流出油の物理的回収を行った後は何もせずそのまま放置して比較的長期にわたり残留油があり、油の影響が残る場合と、?流出油処理のために処理剤や栄養塩を散布して、短期的には生態系への影響がでたとしても、努めて早期に流出油を処理する方がよいのかといった選択を行うことが必要となる。

従って、バイオレメディエーションを行うに当たって、以下の状況毎に評価することが必要と考えられる。

 

○栄養塩そのものの安全性

○油と栄養塩が混じった場合の安全性

○油と栄養塩と処理剤が混じった場合の安全性

○微生物自体の安全性

○微生物の増殖による影響

○分解に伴う中間生成物の影響

 

 

 

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