5.4 測定項目・測定方法
下記のような要領で56日間にわたって測定を行った。
(1)原油残存量・原油分解率
原油残存量の経時変化を測定するために、千潮時に、表層の砂利をランダムに採取し(油は垂直方向に10cm程度しか浸透しないので、この深さまでの砂利を、毎回約150gづつサンプリングする)、クロロホルムにて付着している原油を抽出した後、ガスクロマトグラフ/質量分析(GC/MS)及びイアトロスキャン分析(TLC/FID)を行った。
フラスコ試験の場合には、残存原油の全量抽出が可能であるが、海浜模擬実験装置の場合は全量抽出が困難なため、分解されにくいhopane(ホパン)をガスクロマトグラフ/質量分析(GC/MS)を用いて定量し、これを内部標準物質として用いた。
薄層クロマトグラフと水素炎イオン化検出器を組み合わせたIatroscan(ヤトロン社製)により、原油中の飽和画分(Saturates)、芳香族画分(Aromatics)、レジン分(Resins)、およびアスファルテン分(Asphaltenes)の比率を求めた。
クロロホルム抽出した原油(約0.05g)をクロロホルム(10mL)に溶解し、このクロロホルム溶液1μLをシリカゲル薄層棒(クロマロッド、ヤトロン社製)の片側にスボットした後、溶媒展開を行う。
イアトロスキャンのデータは、hopaneによる補正を行った。
さらに、画分分析結果と原油の画分構成比から原油全体の残存量及び分解率を推計する。
(2)菌密度
満潮時に、海面下5cmの海水を採水し、海水1mL当りのコロニー形成数(CFU)を計測した。
菌密度の計数は、一般従属栄養菌数については、Marine Agar(Difco)のプレートを、原油資化函数については最小寒天培地に原油を添加したプレート(加熱風化原油:1g/L)をそれぞれ用い、段階希釈-塗布法によって計数する。プレートの培養は20℃で行う。一般従属栄養菌については1週間、原油資化菌については2週間後のコロニー形成数から海水1mL当りのコロニー形成数(CFU)として表す。
(3)栄養塩濃度
満潮時に、海面下5cmの海水を採水し、海水中の全リン、硝酸性窒素、アンモニア性窒素および有機体窒素の測定を行う。測定は海洋観測指針およびJIS(工場排水試験法)に準じる。