4.2 赤外線の吸光度による試験
4.2.1 目的
平成7〜8年度の生分解試験に供した試験油は、アラビアン・ライト原油を230℃で加熱処理した加熱風化原油であり、飽和画分(S)55%、芳香族画分(A)33%、レジン(R)とアスファルテン(A)で12%を含んでいる。レジン(R)とアスファルテン(A)は難分解性成分であり、また、芳香族画分(A)も約1/3含んでいるため、かなり生分解しにくい成分を含んでいる。
湾岸戦争後、ベルシャ湾で流出状況などを把握した東京水産大学の大槻 晃教授によれば、流出原油の約1/3が蒸発し(流出後、直ちに蒸発)、約1/3が海底に沈降した(時間をかけて沈降)とされている(図4-2-1参照)。
本試験は、蒸発分と分解されにくいレジン(R)とアスファルテン(A)を除いた成分で試験を行った場合の生分解率を求めるものである。この部分に相当するのはアラビアン・ライト原油の場合、ほぼ軽油に相当する。ただし、軽油は色がついていないため、目視での効果が判断できないため、本試験に使用した油は、軽油に残留炭素分を添加して色を付けたA重油とした。試験に供したA重油の仕様を下記に示した。
なお、イアロト分析では、飽和画分(S)約50%、芳香族画分(A)約50%で、レジン(R)とアスファルテン(A)は検出されなかった(検出限界以下)。
また、参考として軽油及び重油のJIS規格を表4-2-1、表4-2-2に示した。
【A重油の仕様】
品 名:日本石油 「トク エアロクリーン」
比 重:0.85
引火点:65℃
硫黄分:0.04%(低硫黄)