日本財団 図書館


3.4.3 低酸素分圧による影響

 

(1)方法

低溶存酸素の影響試験は、全自動BOD(生物化学的酸素要求量)測定装置を用いて実施する。同装置の培養ビンは容量500mLで、検水(培地)量300mLが標準であるが、原油分解試験の場合、培地量が多いと気相から水相への酸素移動速度が律速段階になる可能性があるため、培地量50mLとする。培地組成等は3.4.2の試験と同様であるが、窒素源は硝酸ナトリウムと尿素の2種類のみである。また、それぞれの培養ビンの内容物は、大型のマグネティックスターラ(350rpm)にて常時撹拌する。試験に先立ち、培養ビンの気相を窒素ガスにて一部置換することによって酸素分圧を下げ、飽和溶存酸素濃度を低下させる。気相中の酸素分圧は試験終了時に測定する。本測定装置は閉鎖系であり消費された酸素量のみを補完していくシステムであるため、試験開始時と試験終了時の酸素分圧は同等である。恒温槽温度は20℃に設定する。

 

(2)試験結果

当初計画した試験条件が妥当であるかを検討するための予備的な試験を実施した。予備的な試験は、硝酸態窒素132ppm(高窒素濃度条件)において加熱風化原油濃度を2,000ppm(当初計画値)および5,000ppmに設定し、それぞれの反応層気相中の酸素分圧を通常の約半分に減じ呼吸活性を測定することで行った。図3-4-9にデータを示す。図3-4-9(上)は呼吸量の積算値を、図3-4-9(下)は積算値から算出した呼吸速度をプロットしたものである。図に明らかなように、もっとも顕著な呼吸活性は培養期間の初期に見られ、数日間を経た後はほとんど変化していない。また、この傾向は、呼吸速度曲線により顕著に現れている。予備的な試験では、15日間に渡って呼吸活性を測定したが後半に見るべき変化はなく、測定期間としては1週間程度で十分であると判断された。また、原油初期濃度を2,000ppmに設定した場合、最大呼吸速度は約25mg/L/Hrであった。この予備的試験以上に酸素分圧を下げる本試験では呼吸活性が十分検出できない可能性も考えられる。そこで、初期原油濃度を5,000ppmまで増大することによって、測定時の誤差の影響を少なくすることができるよう、設定条件の変更を行った。

なお、大気中と同等な酸素分圧条件下での試験では、原油初期濃度5,000ppmの場合、窒素、リン、温度等が同じ条件のもとで約75mg/L/Hrの最大呼吸活性が見られている。また、図3-4-9(上)に示された呼吸活性の経時変化傾向は、3.4.2の試験で示した菌密度の経時変化傾向、すなわち培養開始直後に最も顕著に増大しその後は余り変化しない傾向ともよく対応するものである。最終到達菌密度は原油初期濃度によらずほぼ同一であったが、平均9.92×108CFU/mLと振とう試験で測定された30日培養後の平均菌密度に比べてほぼ1オーダー高い数値であった。本試験では常時強制撹拌(長さ約3cmの撹拌子、350rpm)を行っていたので、原油の分散、細分化、微生物との接触頻度の増大等の因子が影響している可能性がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION