3.4 重要パラメータの同定
3.4.1 目的
実環境においてバイオレメディエーションを実施する際に、現実に人為的な操作を加えることが可能な因子は、かなり限られている。中でも、窒素源やリン源の投入は最も現実性が高く、また効果も大きいと予想される操作である。
一般に、窒素固定能を持たない微生物は、比較的毒性が低い硝酸態窒素を摂取し貯蔵性に優れるアンモニアに還元して、菌体合成に利用すると言われている。そこで、バイオレメディエーション助剤として硝酸態の窒素を添加することの有効性は容易に理解される。一方、土壌の場合には窒素固定能を有する微生物が生産するアンモニア態の窒素は、化学独立栄養菌群(Nitrosomonas属やNitrobacter属等)によって速やかに亜硝酸態を経て硝酸態窒素に酸化されるため、ほとんど存在しない。沿岸部の海洋環境においても同様な微生物の存在が期待できるとすれば、投入する窒素源の種類による影響はあまり大きくないと考えられる。しかし、土壌由来のこれらの硝化菌群は、温度、pH、酸素濃度等の周辺環境条件の影響を強く受けることが知られており、従って、特に溶存酸素の不足が予想される砂礫層の内部では、窒素源の種類による差が顕著になる可能性も考えられる。
そこで下記パラメータを選定し、バイオレメディエーションの成果に影響を与える重要パラメータを同定するための試験を行う。
a. 栄養塩(窒素源)
・種 類: 窒素(硝酸態、アンモニア態、有機態の3種類)
・濃 度: 窒素(低レベル〜過剰値)
・投入方法: 一括及び間欠
(注)リンはリン酸態とし、濃度は過剰値(45.6ppm as P)とする。
b. 溶存酸素濃度
基本的には、試験温度、培地塩分濃度(≒海水中塩分濃度)、空気中酸素分圧で決まる飽和溶存酸素濃度、あるいはそれに近い濃度での試験を行う(培地は常時十分に撹拌する)。
また、培養ビン内空気の酸素分圧を減らす(一部を窒素置換する)ことによって飽和濃度を下げた条件を作ることができる。この場合、培養系内の酸素分圧を実測することによって、飽和溶存酸素濃度を計算することができる。
c. 初期原油濃度