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(2)試験結果

 

原油を水面にまいた直後は、表面張力によって数cmから数十cm程度を中心とする無数のスポットとして表面に浮遊している(写真3-3-3)。浮遊している原油は潮位の低下と共に砂利表面に付着し、一部は砂利の層内に浸透していくが、また、他の一部は潮位の上昇と共に再び浮遊することが観察される。また、満潮時の浮遊原油は時間の経過と共に個々のスポットがまとまり、一つの原油薄膜(Sheen)として水面に浮かぶようになる(写真3-3-4)。一方、砂利層に付着した原油は時間が経過すると共により深く浸透していくが、原油の到達深度には、原油粘度、表面張力、砂利粒度など様々な要因が関与すると予想される。

図3-3-1、3-3-2に浸透原油量深度分布の経時変化を示す。当初の計画では表面から1cmの厚さの層を第一サンプルとする予定であったが、実際に採取してみたところ砂利の平均径が2〜8cmであることから、油にまみれた砂利を薄く採取することが非常に困難であると判明し、以後は3cm厚さで4つの層を採取することにした(写真3-3-6、3-3-7)。図は上から表面〜3cm、3cm〜6cm、6cm〜9cmおよび9cmから12cmで採取した砂利から回収された原油の分布を示している。縦軸はそれぞれの砂利カラムから回収された全原油量に対するそれぞれの層に浸透していた原油量の比であり、横軸は経過時間である。図に明らかなように、全般に時間の経過と共に原油がより深い砂利層に浸透していく傾向が認められるが、その浸透深さは余り深くなく、最も浸透した場合でもその70%程度は表層から6cm程度までの層から回収されている。なお、10日後の浸透試験データが他のデータとは異なった傾向となっているのは、何らかの事由でカラム内に付着した原油量が他のカラムに比して明らかに少なくなってしまったことによると思われ、その大半が表面から3cmまでの層内から回収されている。また、経時日数5日目および14日目間の変化がほとんどないことから、本試験条件では原油の浸透は図に示された深度程度以上には余り進展しないものと予想される。

原油の浸透深さは砂利の粒度ならびに表面粗度、原油性状等に大きく影響されると予想されるが、これらの諸因子の中で原油の性状は微生物的な作用によっても変化するものと考えられる。そこで、試験計画では粘度の経時変化を測定する予定であったが、回収原油量が最大でもlg程度以下であり回転粘度計による分析に供するには不十分であり、粘度は計測できなかった。

一方、砂利層への浸透の影響因子の一つと考えられる原油の表面張力は、微生物の生育に伴って生産される界面活性物質の影響を受けると予想されることから、界面活性剤の存在を示唆すると思われる海水の表面張力を測定することを試みたが、測定上有意な差が出るほどの経時変化は見られなかった。なお、回収された原油量は表面張力の測定にも量的に不十分であった。

それぞれの層から回収された原油の組成比を図3-3-3に示す。なお、最深層(9〜12cm)から回収された原油量はTLC/FID分析に供するには不十分であったので、上部三層のみ対象とした。図に明らかなように、それぞれの浸透深さにおける回収原油の組成比に経時的な差違はほとんど見られない。しかし、それぞれの原油

 

 

 

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