2.4 欧州における成果
2.4.1 欧州における現状のバイオレメディエーションの成果の把握
(1)ノルウェー
ノルウェーは、1976年にスピッツベルゲンの海岸線で試験を行い、農業用栄養塩を使用した場合、使用しない場合の約10倍の生分解が見られたとしている。
また、1980年にもスピッツベルゲンの海岸線で試験が行われ、1年間の油分解率が55〜96g/?であることを推計している。
さらに、1983年にスピッツベルゲンの海岸線で試験が行われ、Inipol EAP 22を初めて使用し、水溶性栄養塩と比較している。その結果、油の消失率はInipol EAP 22、水溶性栄養塩ともnアルカンが45〜85%(栄養塩が無いプロットは10〜25%)、バラフィンは全て消失していた(栄養塩が無いプロットは20〜30%が残存していた)。
1985年、Kings Bay(スピッツベルゲン)でmarine gas oil 88,000リットルが流出し、ここで初めて現実の事故対応としてバイオレメディエーションが適用され、スピッツベルゲンは初期のバイオレメディエーションの研究の中心地となった。1986年、Inipol EAP 22を使用したところ、1年以内に、約90%が消失し、使用しない場合に比して、6〜9倍の生分解率が確認された(使用しない場合の消失率は、15%)。
1989年に、Kings Bay(スピッツベルゲン)で異なる海浜状態(砂浜、砂利・玉石等)でのInipol EAP 22の効果がテストされた。Inipol EAP 22による生分解は、水面上の油にはほとんど効果がなく、荒い砂地、砂利地では効果が高かった。粒子が細かい場合は、生分解率が低く、栄養塩を加えても比率は上がらなかった。
ただし、上記の結果については、文献の記述内容が不十分であること、また試験結果が統計的に処理されていないことから、生分解率等については信憑性に問題があることが指摘されている。
(2)イギリス
1996年2月15日イギリス、ウエールズ南西沖で石油タンカー、シーエンプレス号が座礁し、7万5,000トンの原油(Exxon Veldez号事故時の約2倍の流出量)が6日間で流出した。
処理に当たっては、初期に処理剤が散布され、その後海岸では物理的回収が行われたが、試験的にバイオレメディエーションの試験が行われた。AEAテクノロジーが試験を行ったが、緩効性の栄養塩(窒素およびリン)を通気性のよい靴下に詰めて海浜に埋めることによって、油が分解される効率が約2倍になったことを確認している。
AEAテクノロジーでは、この効果を示して、今後、流出事故が発生した場合にバイオレメディエーションを適用できることを期待している。