(1)Snug Harbor試験(1989年6月〜)
Snug Harbor(Knight Island)は、事故発生後、機械的処理を受けなかった。汚染程度は中程度で、潮間地域に油が広く帯状に広がっていた。海浜の状態は、油の薄い層が玉石の表面を覆い、表面下の砂・砂利に油が浸透していた。
この試験当時は、Exxon社が水洗浄した海浜は試験に使用できなかった。そのため、汚染が中程度のSnug Harborが、水洗浄後の状態を想定できるとして選ばれた。
a. 試験の概要
1989年夏、Snug Harborで、Inipol EAP 22とWoodace Slow Release Briquettesを用いた初のフィールド試験が行われた。
1989年7月8日にSnug Harborにおいて、Inipol EAP 22(親油性栄養塩)とWoodace Slow Release Briquettes(緩効性ブリケット栄養塩)が使用された。ブロックデザインによるサンプリングが行われた。長さ21から35m、幅12mのプロットを6箇所使用し、サンプリングは1プロットにつき21カ所から収集した。
生分解促進効果は、残存油量、炭化水素成分の変化、油分解微生物群数の変化によって調べた。浄化終了点の目安として、微生物数が使われた。
集められたサンプルは、油重量、normal branchedアルカン、栄養塩、油分解バクテリア数をMPNにより分析した。
b. 結果
砂利浜にInipol EAP22を加えたプロットは、10日前後で、未処理地域と比較して砂利浜が視覚的にきれいになった。ただし、表面上の油は見えなくなったが、地中には残存していた。Woodaceの方は視覚的効果もなかった。
2、3週間後、玉石浜でも、Inipol EAP 22を使用したプロットで視覚的効果がみられた。ただし玉石の下の油は残存したままだった。しかし、玉石浜のブリケットやコントロールのプロットでは、視覚的効果も見られなかった。
1989年8月の観察では、Snug Harborの全海浜が視覚的には浄化されていた。よって、栄養塩により浄化効果が約2カ月速まったことがわかる(6月からの栄養塩使用で浄化効果がすぐ現れたため)。
3カ月後、油量は減少しており、視覚的効果はあったが、統計的に見ると処理地域と未処理地域で油残存率にあまり変化がなかったことが明らかになった(Pritchartd et al.)。
どのプロットでも(コントロールも含めて)生分解がみられた。微生物数も全プロットで増加していた。
油分解が一定量進むと油の粘度が落ち、油層が薄くなることから、波動による洗浄がおこり、相乗効果で浄化されるとされている。