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2.3 米国における成果

 

2.3.1 米国での適用事例(Exxon Valdez号の流出油事故対応)

 

Exxon Valdez号の油流出事故後(1989年3月24日に1,100万ガロンの原油が、アラスカPrince William Soundに流出。その数日後の大嵐で、西方の島々やアラスカ湾まで油が広がった)、当初、機械的クリーンアップ(海岸を冷温水で洗浄)を行ったが、機械的クリーンアップには限界があることは明らかであるとして、発生後2週間目にはExxon社は生物学的浄化技術の適用を社内的に検討し始め、1989年4月17日、18日には、US-EPAもこの技術の適用について米国内外の専門家を集め検討した。?炭化水素分解能の優れた微生物を散布する方法、?酵素を溶解させる方法、?栄養塩の散布により元々そこに存在する微生物の生育を促進する方法が検討されたが、結果として当面の実用化段階の技術として推奨されたのは、?の栄養塩の散布であった。栄養塩は、微生物の生育に必要な栄養素(窒素・リン)を供給する役割を担うものである。元来、Prince William Sound及びアラスカ湾には油分解微生物が量、種類ともに豊富に存在しており、油流出後、油分解微生物が急増した。しかし、試験・調査の結果、微生物の栄養分となる窒素とリンが不足していることが明らかとなった。そこで、事故対応にあたっては、栄養塩を海岸線に散布することにより、元々そこに存在する微生物の生育を促進する方法がとられたのである。

しかし、Exxon Valdez号の事故発生以前には、生物学的浄化技術を実際のフィールドに適用したことは、極く限られた回数しかなく、実際に効果が期待できるのかどうか、散布して環境の生態系に悪影響はないのか等の疑問が残されていた。

このため、Exxon社とUS-EPAは、1989年6月にアラスカの生物学的浄化技術試験に関する研究協力協定(“Federal Technology Transfer Act of 1986”に基づく協定)を取り結び、生物学的浄化技術の研究に着手した。

1989年のフィールドテストにおいては、生物学的浄化技術の試験は、6月の初めから7月末にかけて、何回かPrince William Soundの中のKnight Islandの"Snug Harbor"と"Passage Cove"と言う2つのサイトで実施された。この2つのサイトでのフィールドテストの結果、Exxon社のレポートでは、この試験に選定された場所の地質条件では、栄養塩の水溶液は自然条件よりも分解速度を約4倍から5倍速め、"Inipol EAP22"と"Customblen"の組み合わせは、2倍から3倍加速すると分析されている。

これら結果は、必ずしも定量的でなくすべての疑問に応えるものとは言えなかったが、クリーンアップ効果は、一定の条件の下で大規模なアプリケーションへの移行を支持するものであった。

上記のフィールドテストの結果を踏まえ、1989年には8月から冬の到来でクリーンアップ作業が中断される9月15日までの間、生物学的浄化技術が適用された。この年に処理された実際のフィールドは、約74マイルに渡る海岸線である。

クリーンアップが冬のために中止されたとき、Exxon社とUS-EPAは、生物学的浄化技術はクリーンアップに有望であるとの結果を明言した。

US-EPAは、パンフレットでPrince William Soundの油の分解が、自然では5年か

 

 

 

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