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2. バイオレメディエーションのこれまでの成果と研究・実用化動向

 

2.1 要約

 

微生物を利用して汚染環境を浄化する方法は、バイオレメディエーションと言われるが、これは油分解微生物を活性化して浄化を行うものである。

バイオレメディエーションに関する研究は、海洋(海浜部を含む)及び陸上の土壌・地下水等を対象として行われているが、ここでは、海浜部におけるon-site方式(汚染が発見されたその場所において浄化作業を行う)のバイオレメディエーションを対象として、今後の実用化試験(予備試験及び海浜模擬実験装置での試験)及びバイオレメディエーションによる海浜の流出油処理対策のフィージビリティ・スタディ(FS)のためのシミュレーションの実施に参考となる国内外の成果についてとりまとめた。

1989年のExxon Veldez号のアラスカ沖における原油漏洩事故時に、海岸の汚染原油浄化にバイオレメディエーションが適用され、成功したと判断されたことから、米国環境保護庁(以下、US-EPA)では、本格的な研究が行なわれた。米国ではバイオレメディエーションの適用にあたっての栄養塩や微生物製剤の評価のためのプロトコルが1993年にNETAC(National Environmental Technology Applications Center,全米環境技術応用センター)から出されている(現在は、US-EPA National Risk Management Research Laboratory(テキサス)に移管されている。また、現在のところ更新の予定は無い)。

イギリスやノルウェーなどにおいてもフィールド試験を行うなど研究は行われているものの、実用化段階には至っていない。

カナダでは、モーリス・モンターニュ研究所(カナダ漁洋庁)が1984年から研究を行っている。主なテーマは、低エネルギーの砂浜の潮間地域におけるバイオレメディエーションの適用である。

米国、カナダ、欧州等でバイオレメディエーションに関する研究が活発に行われているが、米国の研究は事故への適用事例もあり、実用化の段階にあると考えられる。

文献調査、海外調査により欧米を中心として、バイオレメディエーションの研究、実用化動向を把握した結果、今後は、?栄養塩や栄養塩と油が影響しあった場合等の安全性の確認、?より生分解率を高めるにはどうするか、?バイオレメディエーションの効果を高めるために、海浜部において栄養塩をいかに効果的に微生物に与えるか、?バイオレメディエーションにあたって適用前の現場の状況をどう測定・把握するのか、?沼池等でのバイオレメディエーションの適用等、といった点が今後の研究内容であることが明らかとなった。

一方、我国では、工業技術院四国工業技術実験所/生命工学工業技術研究所、石油連盟、漁場油濁被害救済基金、海洋科学技術センター(科学技術庁の外郭団体)、(株)海洋バイオテクノロジー研究所(協和発酵等民間企業24社の共同出資で設立)、環境庁・水産庁等が調査研究を行っている。

我国の調査研究は、現在のところ、油分解微生物の探索、油分解のメカニズムの解明、効果の確認等の実験室レベルの基礎研究が主であり、実用化には至っていない。

 

 

 

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