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2-2 日本の環境教育が進まない真の問題点とは

2-2-1 環境問題に対する認識の不足

環境問題のなかのひとつ、例えば地球温暖化の原因を教員に問えば、おそらくだれもが二酸化炭素が原因のひとつであると指摘できるであろう。オゾン層の破壊の原因についても同様のことが言える。個々の環境問題については原因が何であるか、その解決に向けどうすれば良いのかということを、漠然とではあるが理解しているのである。

しかし、平成8年度に当協会が埼玉県内の小中学校の教員対象にアンケート調査を実施したところ、6,168人中1,000人近くの教員が、「環境教育をどう進めたらよいかわからない」と答えている。

この結果からは、環境教育の指導方法についてもさることながら、環境教育の目標が明確に見えていないということが浮き彫りとなっている。まずは目標さえ見えていれば、指導方法については目標に向けたものを何かしら考えられるはずである。

現代社会では非常に多くの環境問題が顕在化している。このためか、個々の環境問題といった枝葉の部分ばかりに視点がいき、環境問題を引き起こす根幹については把握していない。したがって、子どもたちを環境教育によって、持続可能な社会に向けて行動するような人材まで育成することができないのである。

環境問題が健在化してきたのは1960年代頃からである。この年代は、急激な工業化と開発が進められた時代である。これはとりもなおさず、私たちが、便利さや快適さ、物質的豊かさを求めて、大量生産・大量流通・大量消費・大量廃棄の社会経済システムを押し進めたということである。便利さや快適さ、物質的な豊かさを際限なく得ようと、私たちは自然を無秩序に破壊し、ダムや農地、宅地、道路をつくり、また多くの資源を採掘してきた。その裏では、自然生態系を大きく破壊し、多くの野生の生きものを絶滅へと追いやっているのである。

経済優先社会のなかでつくられたものや使用されたエネルギーは、すべて固体や液体、あるいは気体のゴミとして捨てられ、その結果、水、土壌、大気などを汚染し、ついには地球環境問題を引き起こすに至った。地球温暖化や酸性雨などは、すべて私たちが築き上げた社会経済システムから放出されたゴミの問題であると言い換えられる。ゴミの問題は、多くの野生の生きものに悪影響をもたらしている。

以上の話を整理すると、環境問題とは、『自然を直接破壊する問題』と『ゴミの問題』ということになる。この2つの問題が原因となり、私たちの社会基盤ともいえる自然生態系を加速的に破壊し、持続不可能な社会にしているのである。

 

 

 

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