1.本書の目的と特徴
「持続可能な社会に向けて・3」平成9年度報告書は、日本財団の助成を受け作成された。ここでは、3年間にわたる国内外の環境教育に関わる情報整理、並びにそれをもとにした今後の環境教育推進のための社会の枠組みづくりの提案、さらに国内の学校教育における環境教育において大きな課題のひとつである教員に対する環境教育トレーニングのあり方について、研究成果を1冊にまとめたものである。
以下、本報告書の目的と特に際だった特徴、独創的な新しい視点について概要をまとめる。
(1) 世界の動向を踏まえ、これからの日本の目指すべき環境教育を示す
環境問題の本質とは、快適さや便利さ、物質的な豊かさを追い求めた社会経済システムにより、私たち人類の存続基盤である自然生態系を崩壊させていることにある。すなわち、これが現代社会が持続不可能といわれている理由である。
こうした実状を解決していくためには、環境教育を「持続可能な社会を目指すための教育」として捉えなおし、自然生態系の重要性を深く認識すると共に、自然生態系と政治・経済・社会・文化等のつながりを踏まえ、個人のライフスタイルの改善はもとより、現代の環境問題の解決に向け市民として義務や責任を引き出すものでなければならない。
そうした際に、断片的なテーマで、しかも知識偏重型から脱却できていない我が国の環境教育と欧米の環境教育とでは、その考え方にはいまだ大きな開きがあるといわざるをえない。
本書では、環境教育を先進的に進める欧米諸国の最新の動向を提示すると共に、環境教育の考え方やその推進体制、指導者の研修に関するカリキュラムなどを提示し、日本において環境教育を進める上での筋道を提示する報告書である。
(2) 海外の先進事例の収集と選定
海外の先進事例を収集し、実態を把握するために、海外調査を行った。今年度は、8月にはアメリカ合衆国ウィスコンシン州、9月にはドイツ、ベルギー、ノルウェーを訪れ、行政機関、大学関係者等を直接訪問して、最新環境教育の動向や環境教育の考え方、並びに指導者養成及び研修における法的整備やその先進的なカリキュラムについて収集活動を行った。
収集された海外の先進事例については、まず日本語に翻訳し、その中から日本において前例がなく、日本国内において大いに参考となる考え方や事例について選定し、本報告書の中で紹介する。