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(2)コンピューター解析による演繹的手法

生物多様性の保全上重要な地域であっても、高次消費者の生息情報が得られていない場合にはコアエリアの選定からは洩れることになる。またその洩れは山間部において顕著となることが考えられる。そこでこれを避けるために、山間部においては高次消費者の繁殖が可能と考えられる区域のコンピューター解析を行うことにより抽出した。手順を以下に示す。

低山帯以上の地帯区分における高次消費者としては、かつてはオオカミやイヌワシ・クマタカ、水辺ではカワウソなどが想定されるが、実際に営巣地の情報が得られたのはクマタカの9ヶ所のみであった。

生存基盤と見ることができる。また人為影響が強くなると、餌生物の供給源となる広葉樹林がある程度広がっていても生息や繁殖は望めない。

供給源となる広葉樹林がある程度広がっていても生息や繁殖は望めない。

そこで、この9ヶ所の営巣地を中心として、クマタカの行動圏*に相当する4キロ四方内の総樹林地率と広葉樹林地率を求めると、それぞれの最低値は93.8%および41.0%となった。この数値をこれ以下の値の地域においてはクマタカの営巣がみられないという最低ラインと設定する。総樹林地率や広葉樹林地率の算出には、通常植生図が使用されるが、埼玉県域が網羅されたものは1981年に環境庁により作成されたものしかなく、実際とはかなり異なることが予想されるため、アメリカの人工衛星ランドサットから得られた情報を基に県域の植生等を判別し、それぞれの割合を求めた。

次に、これらの作業によって得られたデータを用い、ある一点に対しそれを中心とした4キロ四方の評価枠を設定し、その中の広葉樹林率および総樹林率が最低値以上の地域のみを評価すると左図のようになる。ここで浮き上がってきた区域は、広葉樹林率および総樹林率からみたクマタカの営巣可能性域である。しかし、評価地点を中心に4キロ四方の広い面積を評価して浮かび上がった点であるため、その地点の評価に貢献した広葉樹林地を広く含めてコアエリアの境界線を引いた。

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* 猛禽類保護の進め方(環境庁,1996)によると、クマタカの行動圏の平均は1,500ha〜2,000haとされており、これをコンピュータ処理の評価枠に置き換え4km四方とした。

 

 

 

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