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?U. 埼玉県の自然環境

 

-その基盤と現況-

 

?T章では、欧米環境先進諸国における生物多様性保全に向けた取り組みやその背景、また各国への波及状況などについて概説した。各国での取り組みは、生物多様性保全を同一の基本理念として持ちながらも、その国の国情に則した国や地域で異なる取り組みが展開されていた。

埼玉県においてこのような取り組みの展開を望むとき、埼玉県の規模や環境条件に則した手法の構築が望まれる。その際の前提条件として必要となる埼玉県の成立基盤とそれを反映した環境構造、またそれに依存し成立している自然生態系の現況を本章において詳述する。

 

1.自然環境の概要

 

1-1. 位置・地形・地質

 

埼玉県は、関東地方の中西部に位置し、東西距離103km、南北距離52km、面積が3,797平方キロの内陸県である。標高2,000m級の山々を有す西部の秩父山地から、中央部の丘陵と台地、そして東部の50m以下の広大な低地に至るまで変化に富んだ地形を有し(図?T-1)、多様な自然環境に恵まれている。

西部の秩父山地は、関東山地の一部であり、県下の最高点である三宝山(2,483m)周辺の2,400m以上の山峰が集まる地域より、東方および北方に向かって、次第に高度を下げる地形を呈している。秩父山地の中央部には、一辺約13kmの正方形に近い形をした秩父盆地と、そこから北西方にのびる山中地溝帯があり、周囲の山地とは、成因・地質などを異にし、自然環境に変化を与えている。秩父山地の中でも、山中地溝帯の南西部にあたる標高1,000m以上の地域は、奥秩父山地と呼ばれ、荒川やその支流が深く浸食し、壮年期初め頃の急峻な地形を呈している。すなわち、尾根の平坦面は少なく、山腹斜面は急傾斜でV字谷をつくり、谷底は狭くなっている。一方、山中地溝帯の北部と東部は、それぞれ上武山地、外秩父山地と呼ばれる地域で、標高1,000

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