の流れにほぼ沿って変針することができたためと推察される。以降、直線的に南下し、水域C(小浦埼付近)において針路を左にとったため右舷側への圧流が生じたものの、潮流影響は最大でも約7°おさまった。
大型船2回目では、南下を開始するタイミングが1回目よりも遅れたため、右舷側への圧流が増大することとなった。水域Bにて右転が始まるものの、すでに馬島に接近しており、左舷への圧流も大きくなって馬島に異常接近することになった。水域Cにおいて斜航角は高くなっているが、これは馬島小浦埼への異常接近に対応しており、基準値を超える約22°となった。この後左転により水道中央への向首が図られたが、左への回頭量が少なく、来島白石灯標方向への接近が継続した。水域D(ウズ鼻の南側水域)において針路を東寄りにすることができたが、今度は潮流を左舷方向から受ける姿勢となり、右舷(南方向)への圧流が増大することになった。この時の斜航角も基準値を超えている。
大型船3回目では、2回目での操船結果を参考とし、小島沖での変針時機を早めた。その結果、右回頭に伴う斜航角は7°程度に抑えることができ、また、ウズ鼻付近での変針後も右舷(南方向)への圧流も少ないものとなった。
小型船の斜航角に着目してみると、大型船の2回目・3回目と同じ傾向にあることがわかる。いずれの水域においても斜航角は基準値を超えることはなかったが、比較的高い値で推移している。特に水域D(ウズ鼻の南側水域)での最大値は、ほぼ基準値とみなすことができる。
以上のことから、南流時に西水道を南航する場合には、航路の屈曲に従って潮流を受ける舷が変化し、その都度圧流が卓越する危険性が潜んでいると言える。一度、変針の時機を失うとその後の針路制御が困難になり、水道内を大きく蛇行する可能性が高くなることに注意する必要がある。
4)追越しの危険
操縦シミュレーション(2船間相互影響)によると、南流時に西水道を南航する場合に、水域B(小島の東側水域)で追越し状況では、追越し船・被追越し船の衝突が発生している。また、水域C(小浦埼からウズ鼻)および水域D(ウズ鼻の南側水域)では目標航路からの偏位量は50m以上、側方距離は100m以上となった。
ただし、水域Cおよび水域Dにおける追越し船(大型船)は、操船シミュレータ実験にみられたような蛇行した航跡となっている。その結果、側方距離が100m以上確保されたものである。
今回の操縦シミュレーションで設定された追越しの発生場所は、蛇行の過程でお互いに離れる位置となったため、結果的に側方距離が確保されることとなった。追越しの発生場所如何によっては、蛇行による衝突が新たに発生する可能性を想定することができる。
南流時に西水道を南航する際の追越し操船には、水域Bだけではなく、水道内を通じて危険性が潜んでいるものと判断できる。