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3)潮流影響

このシナリオでの潮流影響(即ち、斜航角)は大型船・小型船とも全航程を通じて基準値以下で推移しているが、小型船の方が大型船に比べて若干値が大きくなっている。これは、中水道に進入する前に速力を落としたために、潮流の影響をやや受けることになったものと考えられる。ただし、中水道の航行は直線的であることと、大型船・小型船ともに他船を大きく避航するような状況が無かったことから、船体制御が困難となる状況にはならなかったと推察できる。

ただし、大型船・小型船とも水域F(中水道北側で西方向に向首する水域)において潮流影響が増大する傾向が認められる。これは、中水道付近では、ほぼ船尾方向から潮流を受けていたのに対して、西に向首することにより左舷方向からの流れに変わり、北方向(津島方向)への圧流が生じていることを示している。津島への接近を考慮すると、中水道を抜けてから西方向への向首のタイミングには注意カミ必要であると言える。

 

4)追越しの危険

操縦シミュレーション(2船間相互影響)では、被追越し船の目標航路は馬島寄り、追越し船の目標航路は中渡島寄りとされた。水域I(中水道最狭部の南側水域)で追越しが行われると、目標航路から50m以上外れてしまうことに加え、2船が100m以内に接近する状況が発生した。

この水域では被追越し船・追越し船とも右転により北(最狭部)方向へ向首するが、被追越し船の方が追越し船より若干早く最狭部へ向首することになる。即ち、追越し船からみて、被追越し船が前方を塞ぐ(=接近する)姿勢となる。続いて追越し船も右転するものの、順流により被追越し船側へ圧流されてしまい、2船が接近することとなった。一般的にも変針点付近で他船を追越す状況では、先行する被追越し船の挙動に十分な注意を払う必要があるが、潮流(順流)を受けている状況では自船の転舵のタイミングにも留意しなければならない。このシナリオ(北流時・中水道・北航)の当水域において追越しを行うことは危険を伴うものと判断される。

なお、水域G(中水道最狭部の北側水域)における追越しでは、目標航路からの偏位量も少なく(50m以内)、2船が100m以内に接近する状況には至らなかった。これは、当該水域は西方向への変針点の手前であることと、ほぼ北流に沿って北航している状況で圧流される量が少なかったことが理由として考えられる。

 

5)測位誤差

測位誤差は大型船・小型船とも水域J(中水道南側の水域)で最大(約25m)、水域H(中水道最狭部)で最小(約5m)となっている。ここで示されている測位誤差は、陸岸の物標を利用した測位方法を前提として、最も精度が高くなる位置の線の組合わせによる測位誤差であり、来島海峡付近における測位精度の限界値を表している。

操船シミュレータ実験における操船者は、他船の動静や陸岸との相対関係を常に監視しており、必ずしもここで示された測位精度でもって位置を同定しているとは限らない。

 

 

 

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