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6.2.2評価指標の概説

(1)潮流が操船に与える影響(操船影響)評価の指標

1)操船者の意識を考慮した指標(環境ストレス/環境ストレス値)

環境ストレス値とは、自船を取り巻く環境を操船環境(地形や水域施設とこれらとの相対的な位置関係に影響する自然条件)と交通環境(他船の存在や見合い関係)とに大別し、それぞれに起因する操船上の負担を表す数値指標を操船環境ストレス値および交通環境ストレス値とし、これらを総合化したものである。

それぞれのストレス値の取りうる値は0〜1000で、1000は操船者が「非常に危険」と感じる(即ち、最も負担が課せられている)状況に対応している。今回の操船シミュレータ実験の評価においては、操船者が「やや危険」と感じる状況に対応する環境ストレス値750を操船者が感じる負担の許容限界値と位置付け、基準値として用いることとした。

 

2)操船者の生理的反応による指標(生理的反応/SNS値)

SNS値とは、人間がある仕事をする際に課せられる負担を生理的な側面から表す指標である。生理学的な特徴として、心拍は一定間隔ではなく常に変動している。心拍数の変動(これを周波数とみる)は二つの神経(交感神経・心臓迷走神経)に支配されている。交感神経は緊張した状態に、心臓迷走神経はリラックスした状態においてそれぞれ活動が活発になる。心拍変動の周波数成分の比率からいずれの神経が活発であるのかを推定することができ、これをもって緊張あるいはリラックスの程度を特定することができる。SNS値は緊張の程度に対応する心拍変動の周波数成分の比率である。

さらに事前の実験等を通じて、取得されたSNS値サンプルの標準偏差を超えるSNS値の発生頻度(F-SNS値)が、与えられた負担のレベルと良く対応していることが確認された。

ここではF-SNS値をもって、緊張感が持たれた状況を同定するとともに、その程度を知るものとした。ただし、負担の許容限界を示すF-SNS値については今後の研究を待つところであり、各実験ケース間の相対比較に供するものとした。

 

(2)潮流が操縦に与える影響(操縦影響)評価の指標

1)追越し時の危険性を表す指標

(追越しの危険/目標航路からの偏位量・2船間の側方距離)

操縦シミュレーション(2船間相互影響)において、追越し船と被追越し船は各々目標航路が定められ、中水道あるいは西水道のあるポイントにおいて最接近(即ち追越し)するように航行するものとした。このとき、潮流の影響あるいは2船間に働く相互作用により、目標航路から外れてしまうともに、船間距離が短くなることが予想される。目標航路からのずれを偏位量、追越し時の最接近距離を側方距離と呼ぶこととし、各水道内に設定された複数のエリア(評価領域)ごとに追越しが再現され、偏位量と側方距離

 

 

 

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