(ii)北流最強時に南航する場合
図?-4-10〜図?-4-12には、北流最強時に西水道を南航中のShip 2が同じく南航中のShip 1を追い越す場合の2船の航跡を示している。図?-4-10は追越し目標点をA点とした場合の結果であるが、北航時の場合と同様に変針点付近において潮流の流向が大きく変化している影響により、被追越し船Ship 1は目標航路からの大きな変位を生じている。しかしながら、変針後は両船ともに目標航路からの大きな変位を生じることなく航行しており、相互干渉力の影響はさほど現れてないものと思われる。図?-4-11および図?-4-12は追越し目標点をそれぞれB点、C点とした場合の結果であるが、追越し目標点の位置に関係なく、どちらの場合も変針点付近で被追越し船の航跡が一時的に目標航路から大きくずれる結果を示している。したがって、この航路のずれは潮流の分布に起因するものと考えられ、相互干渉力の影響に比べて潮流が船の操縦運動に及ぼす影響が大きいものと考えられる。
(2)中水道航行時の操縦運動
(i)北流最強時に北航する場合
図?-4-13、図?-4-14には、北流最強時に中水道を北航中のShip 2が同じく北航中のShip 1を追い越す場合の2船の航跡を示している。図?-4-13は図?-4-5に示した目標航路において、追越し目標点をD点とした場合の結果を示しているが、被追越し船、追越し船ともに目標航路からの変位が若干大きくなっている。この原因としては、目標航路の変針点付近において潮流の流向が北西方向に変化していることによる影響が考えられる。これに対して、追越し目標点をE点とした場合の図?-4-14を見ると、被追越し船、追越し船ともにさほど大きな変位を生じることなく目標航路に沿って航行することが可能となっている。
(ii)南流最強時に南航する場合
図?-4-15、図?-4-16には、南流最強時に中水道を南航中のShip 2が同じく南航中のShip 1を追い越す場合の2船の航跡を示している。図?-4-15は図?-4-6に示した目標航路において、追越し目標点をD点とした場合の結果を示しているが、変針時に両船ともに潮流の影響により、目標航路からそれて航行する結果となっている。また、図?-4-16に示した追越し目標点をE点とした場合にも潮流の流向変化に起因すると思われる航跡の変化が見られるが、航行上さほど大きな影響はないものと思われる。
4.1.5評価指標の検討
前節までに示した手法に基づいて、大型船が小型船を追越しする場合のシミュレーション計算を実施し、船舶の航行の安全性を評価するための指標について検討を行う。船舶が他船の追越しを安全に行うためには,船舶問の距離を十分にとる必要があるため、まず航行の安全性の評価指標として2船間の重心位置距離(以後,側方距離と呼ぶ)を採用するものとした。評価領域内の航行船舶が追越し船、彼追越し船の2船のみである場合