4.1.4追越し船.被追越し船の操縦運動
前節までに示した方法により、西水道および中水道において2隻の船が追越しを行いながら航行する場合の操縦運動について、シミュレーション計算を行った。ただし、ここでは、順中逆西航法の場合についてのみ検討を行った結果を示す。
シミュレーション計算条件は、対水船速U1=10ktで航行中のShip 1を対水船速U2=15ktで航行中のShip 2が追い越すものとした。この時、被追越し船Ship 1と追越し船Ship 2について、図?-4-5および図?-4-6に示すように北流、南流の場合に対してそれぞれの目標航路を設定し、航路図中に示したA〜Eの各点において追越しを行うものとした。ただし、追越しを行う時の各船の目標航路間の側方距離は100mと設定した。また、被追越し船Ship 1、追越し船Ship 2ともに、その針路を保つように次式で示されるような口頭角Ψi、回頭角速度の無次元値r'iならびに目標航路からの横方向変位の無次元値 ̄Iiに比例するような操舵を行っているものとした。
ここで、Ψ0iはShip iの目標航路の方位角である。K1、K2、K3は比例定数であり、K1、K2に対しては、Ship 1、2ともにそれぞれK1=3.0、K2=2.0と設定した。K3については、彼追越し船Ship 1に対してはK3=0.2、追越し船Ship 2に対してはK3=1.0と設定してシミュレーション計算を行った。
(1)西水道航行時の操縦運動
(i)南流最強時に北航する場合
図?-4-7〜図?-4-9に、南流最強時に西水道を北航中のShip 2が同じく北航中のShip 1を追い越す場合の2船の航跡を示している。各図における(a)、(b))図はそれぞれ航路の全体図および追越し目標点付近の2船の航跡の拡大図である。また、各図中のベクトルは潮流の流速および流向、船影は被追越し船および追越し船の位置を示しており、船影の横に記した数字はシミュレーション計算開始からの経過時間(分)である。
まず、図?-4-7は図?-4-6に示した目標航路において、Ship 2がShip 1を追い越す時の追越し目標点をA点付近と設定した場合のシミュレーション計算結果を示している。図?-4-7において被追越し船のShip 1の航跡を見ると、馬島の西側で変針したあと、目標航路からの変位が次第に大きくなり、追越し船のShip 2に接近する方向へ航行している。これは変針直後にShip 1は左斜め前方より潮流を受けることになるため、その影響によるものと考えられ、さらに追越し船に接近した結果、2船間の相互干渉力の影響も多少現れているのではないかと思われる。
図?-4-8および図?-4-9は、追越し目標点をそれぞれB点、C点とした場合のシミュレーション計算結果を示している。どちらの場合も潮流の影響により被追越し船Ship 1の航路が目標航路から若干ずれる結果となっているが、図?-4-7に示した結果ほど追越し船Ship 2とは近接することなく航行することが可能となっている。