(1)RRV法によるSNS値の一般特性
RRV法は演算サンプル数を少なくしている為、自動車に比べ動きが緩慢な船舶や比較的負担レベルの低い作業などでは、計測信号は肉体的要因により影響を受けやすい事となる。瞬間的に極めて高い精神的負担を生じる自動車操縦に対し、比較的緩やかに変化する操船負担を計測する為には、有意な信号を検出するための特別なデータ処理を行う必要がある。先ず、基準となるSNS値を求める為に、一定負荷レベルのテストを行った。タスク内容は、ランダムに組み合わされた2つの平仮名を50音順に並べ替えるというもので問題数は30間とした。図?-3-19(a)に結果を示す。
SNS値はタスク内容に関係無く呼吸数、年齢、実験時の姿勢、食事摂取、運動負荷、日内変動などの影響を受ける。図?-3-19(a)中に異常に高い値が見られる。これは、実験行動記録より、深いため息、などタスク自体に関係ない行動により現れていることが分かった。
そこで、与えられたタスクに依存した知的負担の変化を見る為に実験で得られたSNS値全体から散発的に発生している高いレベルの信号を除去することとし、標準偏差内のデータ抽出を行った。図?-3-19(b)に結果を示す。次に?-3-19(b)のSNS値は1心拍(1Beat)毎のデータとなっており、一定負荷レベルのタスクに対しては、振幅変動が大きいと考えられる為、10秒移動平均を行った。図?-3-19(c)にその結果を示す。以上のデータ処理後の信号は一定の負荷に対しほぼ一定の値を示すことが判断できる。
この処理方法は、他の被験者においても同様な結果が得られた為、この処理で得られる値を著しく大きな負荷変動のないタスクに対する妥当なSNS値として研究を進めた。