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3.2操船者の生理的反応による操船負担度の推定

3.2.1評価の目的

船舶の運航は、航行環境と船舶そして操船者によって形成されている。最近の船舶運航環境の著しい変化に伴い、安全かつ効率的な運航環境を確立することを目的とし、操船者に負担を与える要因を指し示す評価方法が要求されている。現在、アンケート等の主観的な評価がしばしば行われている。しかし、アンケート等の主観的評価では、普遍性を維持できない場合があることが指摘されている(1)。そこで、評価をより客観的に行う必要が強く求められており、以下の代表的な客観的評価を行うことにより主観的評価の弱点を補うことができるとされている。

・船舶操縦における行動評価

・副次タスク法による評価

・負荷に対する生体反応評価

本研究では、特に生体反応を用いて人間が受けている負担の推定方法に着目し、RRV法によるSNS値を負担の代表量として取り扱うこととした。はじめにRRV法によるSNS値を用いて人間の知的負担を推定する為に必要なデータ処理法を検討し、その妥当性の検証を行った。更に提案するデータ処理によって得られる値を用いて代表的な操船モードにおける操船者の知的負担の推定を行った。

3.2.2RRV法によるSNS値の推定

先に述べた代表的な客観的評価である副次タスク法は、有効な評価法とされておりその妥当性の検証もなされている。しかし、副次タスクは被測走者に負担を与える場合もあり、計測を困難にさせることがある。

心拍変動データ(以下、R-R間隔とする)は心拍計で簡単に計測することが可能である。しかも、今回実験に用いた心拍計は小型、軽量であり被験者に負担を与えないものである。

現在迄に主として提案されているSNS値はこのR-R間隔をスペクトル解析を行うことにより得られるものである。ここで得られるSNS値は、5分間毎の負担の平均値を示すものであり、時々刻々に変化する知的負担の変化を見ることが困難である(2)

一方、今回取り上げたRRV法は、演算サンプル数を少なくして短時間の負荷変動を推定する事が可能である。この利点を活かし、素早い判断、行動を要求する自動車操縦における操縦者負担の解析に多く利用されている(3)

RRV法は実験で得られた連続したR-R間隔の分散を用いることにより、演算サンプル数を少なくして、高周波成分(HF0.15〜0.45Hz)と低周波成分(LF:0.04〜0.15Hz)を抽出する方法である。高周波成分は、連続したR-R間隔3つを(1)式へ代入しRRV3を求めることにより得られる。

 

 

 

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