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2)同航の交通環境ストレス

制約された水域では同航する他船で周囲を囲まれるような操船状況も珍しくない。この場合、自船と他船が同針路、同速力であれば、自他船とも針路、速力を変更しない限り他船との衝突危険が顕在化することはない。しかし、2間に衝突関係が発生しなくても周囲を他船で囲まれること自体、操船者にとっては自船の行動の自由を制約されるので、このような場合には操船者には大きな負荷が課せられる。

ここでは、自船、他船とも長さ100m、速力10ノットとして、周囲に自船と同針路、同速力で航行する他船が存在するときの交通環境ストレス値の大きさを算定してみる。

図?.3.3は、他船が1隻の場合についての結果を示している。図中の各数値は1隻の他船が自船の前方、斜め前方、正横、斜め後方、後方にあって相対距離で100m,150m,200m,250mの各位置にいる時の交通環境ストレス値を示している。同航の他船は自船の至近にあるほど負荷は大きく、また、同じ至近であっても他船が後方にいる場合の方が負荷は大きく現れている。

自船後方に他船がいる場合に比べて自船前方に同速力の他船がいる場合に交通環境ストレス値が比較的低いのは、自船がどのような操船行動をとろうとも同航の他船との間に衝突危険を招来することはなく操船の自由度が大きいという操船者の意識を、逆に、自船前方にいる他船よりも後方に他船がいる方が交通環境ストレス値が高いのは、これは、自船の操船行動が忽ち後方の他船との間に衝突危険を招来することを熟知している操船者の感覚をうまく表現するものであるといえる。

図?-3-4は、自船を中心にした8方位の延長線上、相対距離150mのところに複数の他船がいる場合の交通環境ストレス値を算定した結果をとりまとめたものである。自船を囲む複数の他船の配置の組み合わせは、図中の船の位置に示した番号の組み合わせで示している。やはりこの場合も自船の周囲を囲む他船の数が多いほど負荷は大きく、また、前方を囲まれるより後方を囲まれる方が負荷は大きい。

3.4.8操船環境と交通環境の同時評価の考え方

狭水道や港内のように操船水城が制約され、かつ、交通が頼接する環境下での操船困難性を評価するためには、操船環境に基づく負荷と交通環境に基づく負荷とが、共通の指標を用いて、同じアルゴリズムのもとで、統一的に評価できることが望ましい。

これまでのところ、操船環境の評価と交通環境の評価とは個別に指標値が開発されてきた経緯があり、したがって、それぞれに評価の手続きや思想が異なるために、また、指標値が異質なために、合理的な考え方のもとで互いに合算評価することが難しかったが、本研究において提案する操船環境ストレスと交通環境ストレスを指標とする評価モデルは、この点を克服する事が可能である。

同時評価を行うに際しては、「±90°の針路範囲の各針路刻みごとに、自船船首をその方位に向けたとしたときに潜在する護岸や防波堤などの固定障害物への衝突に対する危険感と、その方位に向けたとしたときに潜在する他船との衝突に対する危険感とを互いに比

 

 

 

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