較し、各針路ごとに危険顕在化までの時間余裕に基づく切迫の度合いからもたらされる危険感の大きい方の値を採用する。そして、これら大きい方の危険感の値で形成される包絡線に着目して、この包絡線の範囲を±90°の針路範囲で総計し、その結果を以てその瞬間の総合化された環境ストレス値とする」という考え方を取る。
3.1.9環境ストレスの値に対する操船者の許容感
提案した評価モデルにおいては、環境ストレスの値の0〜1000の範囲を、表III-3-1に示すように区分して負荷の程度をランク付ける基準を設定しているが、ここでは、操船者に対するアンケート調査により負荷の程度と許容感の対応関係を集約した結果を基に、4分類の評価基準と操船者の許容レベルとを対応付けた。l
これによると、環境ストレスの値の0から750の負荷の範囲は操船者にとっては許容可能な状態にあるが、環境ストレスの値の750から900の“Critical”のランクでは課される負荷は許容の限界にあり、環境ストレスの値が900以上の“Catastrophic”のランクになると操船者にとっては許容不可能となる。
これまでのところ、自船を取り巻く環境の変化がどのような状況にあれば操船者にどれほどの負荷がかかり、また、その負荷がどれ程のレベルになれば操船者にとって許容できなくなるか、これらを明確に表現できる指標や基準を持ち合わせてこなかった。しかし、ここに述べたような負荷のランクと許容可否の関係の導入により、環境ストレスの値がどれほどになるとその環境が課す負荷の状態を許容できなくなるかを判定できる、いわゆる評価基準を備えた定量化指標を提案することが可能になった。
【参考文献】
(1)井上ほか:操船者の危険感に基づく操船環境の評価一評価指標としての環境ストレス値の定義一、日本航海学会論文集、第95号、平成8年9月
(2)井上ほか:操船者の危険感に基づく操船環境と交通環境の同時評価法、日本航海学会論文集、第97号、平成9年9月
(3)井上ほか:海上交通安全評価のための技術的ガイドライン策定に関する研究-I.-環境負荷の概念に基づく操船の困難評価-、日本航海学会論文集、第98号、平成10年3月掲載予定
(4)井上ほか:危険の切迫に対して操船者が感じる危険感の定量化モデル、日本航海学会論文集、第98号、平成9年9月、平成10年3月掲載予定
(5)井上ほか:制約水城における航過距離と離隔距離に関する操船者意識のモデル化、日本航海学会論文集、第90号、平成6年3月