潜在するときには、そのうちの危険感の最も大きいものをその針路ψにおける危険感として抽出する。
?針路刻み(△ψ)を1°にとり、求められた各針路ごとの±3の危険感を、+3を0とする0〜6の範囲に尺度変換し、±90°の針路範囲で総計してその瞬間の交通環境ストレス値とする。交通環境ストレス値も、操船環境ストレスの場合と同様に、180×0=0を最少、また、180×6≒1000を最大として割り当てる。
?SJLの値も、0を安全と危険の境界、-1はやや危険、-2はかなり危険、-3は非常に危険というように、操船者が感じる危険感と対応付けがなされていので、操船環境ストレスの場合と同様に交通環境ストレス値の0〜1000の範囲を“Negligible”、“Marginal”、“Critical”、“Catastrophic”の4つに分類し評価の基準とする。
(2)交通環境ストレス値の算定
1)出会いの交通環境ストレス
交通環境ストレス値の算定例として図?-3-1に示すような典型的な出会いを対象に、衝突が切迫するにつれて交通環境ストレスがどのような変化傾向を示すかを算出した結果を例示する。自船、他船ともに長さ100メートル、速力10ノットとして、自船が針路0°で航行中に他船との出会いが発生して15分後に完全衝突する場合を想定する。なお、他船の針路は180°,225°,270°,315°とした。
それぞれ針路交差角が異なる典型的な出会いについて、計算開始から衝突までの時々刻々の算定結果を図?-3-2に重ね描きして示す。いずれの出会いにおいても、2船が接近するにしたがって衝突を避けるために取らなければならない自船の針路範囲が広がり、それだけ操船者に課せられる負荷が増大する様子がよくわかる。
他船の針路が180°よりも270°、270°よりも315°の方が交通環境ストレス値は高い値となっている。これは操船者が行き会いの関係よりも横切り関係に、同じ横切り関係でも真横からの横切りよりも回航気味の横切りになるほど、自船に許された避航操船のための行動水域の自由度が制約されることになるため、いやな見合い関係となるという意識がうまく表現されている。
次に、図?-3-1に示した典型的な出会いのなかから真横からの横切りを対象に、自船の長さを50m,100m,200mに変化させた場合の算定例をとりあげる。計算開始から衝突までの時々刻々の交通環境ストレスの算定結果を図田.3.2に示す。
図?-3-2の結果をみてわかるように、自船の船型が大きいほど交通環境ストレス値は高い値を示す。モデルの計算過程においては自船の長さが長くなると自船の周囲に設定した他船の侵入を許さない領域範囲が広く大きくなる。そのため大型船にとっては許された避航操船のための行動水城が小型船に比べてより大きく制約されることになり、結果として交通環境ストレス値は高い値となる。同じ接近条件でも大型船の操船者にはより大きな負担が課せられる様子がうまく表現されている。