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3. AISの方式

その後、いろいろな国でAISに関する研究・開発が進み、最近ではAISの持つ機能として、ふくそう海域における船舶間においても情報の交換が可能なものが要求されるようになってきた。

AISを装備することにより、航行船舶(船舶間においては相手船)の識別符号、位置、進路及び速度等の状況を明確に把握することが可能となることから、船舶間においては衝突回避などに役立てることができ、また、VTSにおいては危険回避などの航行支援情報の提供をより確実に行えるようになるもので、現在、次の二つの方式がIMOに提案され、一部の国で実用あるいは実験がなされている。

 

(1) VHF/DSC方式

前述のCCIR(現ITU-R)勧告M.825に準拠したAISとしてVHF/DSC方式と呼ばれるものがあり、このシステムは、VHF CH70を使用し、基本的には地上制御局(例えば、VTSセンター)から質問を行うと、次の情報を陸上の受信局及び他の船舶に通報するものである。

静的情報・・・・・・海上移動業務識別(MMSI)、船名、船体長、船種

動的情報・・・・・・船舶の位置、船舶の対地進路、船舶の対地速度

 

(2) 放送方式

現在、放送方式と呼ばれるAISが開発され実験されているが、この放送方式が開発されるに至った背景としては、勧告M.825の中で指定されたAISは、使用周波数がGMDSSのDSC通信専用波であるVHF CH70で1,200bpsの低変調レートであり、また、各トランスポンダーからの送信が非同期であるため、単位時間当たりの通信容量が限定され小容量となり、船舶交通がふくそうする海域での必要性に対応することが難しく、また、衝突防止のための船舶間通信、あるいは早急な更新を必要とする海域における航行もしくは追尾のためにも利用することができない。

一方、船位を求めるための全世界的衛星航法システムは、現在、米国のGPSシステム及びロシアのGLONASSが運用中であり、これらのシステムの受信機と、VHF帯の送受信機及び通信用処理装置とを組み合わせることにより、船舶の位置及び識別信号などのデータを自動的に伝達することが可能であり、さらに航行衛星から得られる正確な時間情報は、異なる船舶からの情報の送信を同期させるために利用することができることから、無線チャンネルの効率的な利用を可能とし、各送信機が、あるタイムスロットの間にその情報を通報することができる。

このような背景と新技術から開発されたAISが放送方式と呼ばれるもので、タイムスロットの割当に自立式時分割多元接続(Self-Organized Time Division Multiple Access: SOTDMA)方式を利用したものであり、厳しい交通環境の海上においても、期待されるすべて

 

 

 

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