参考資料5.3-4
自動識別システム(AIS)
(Automatic Identification System)
海上保安庁灯台部
電波標識課信号施設室
1. はじめに
航空、海上を問わずすべての移動体(航空機、船舶)にとって、運航の安全と能率の改善のためには、自分の位置及び他の移動体の把握は欠かせないものであり、今日では、殆どの移動体がその手段の一つとしてレーダーを活用している。
もちろん、これら移動体の安全及び能率改善の支援を行う航空交通業務(Air Traffic Service:ATS)及び船舶通航業務(Vessel Traffic Service:VTS)においても同様にレーダーが活用されている。
しかし、このレーダーでは他の移動体の存在及びその動静は把握できるが、その固有名称までを把握することは当然ながら不可能である。
このことから、ATSの分野においては、二次レーダーを利用したトランスポンダーが開発され1950年代の末には既に運用を開始しており、目標の自動識別も行えるようになっているが、海上交通の分野においては、いろいろな実験が行われた事例はあるものの、船舶識別はVHF無線電話などによる通信に依存しているのが現状である。
2. AISの誕生
当初、AISの開発は、VTSを含む航路標識を運用する世界の主官庁の集まりである国際航路標識協会(International Association of Marine Aids to Navigation Lighthouse Authorities:IALA)が、船位通報の自動化と船舶乗組員及びVTS職員の労力軽減を図り、併せて通信のふくそうを防ごうとする目的で、VTS管轄海域内に進入し航行する船舶に関する情報を自動的に得るシステムの調査研究から開始されたものである。
IALAは、国際船長協会連合会(International Faderation of Masters Association:IFSMA)などの海事機関と共同で、IALA・VTS委員会が行った調査研究の成果に基づいて国際海事機関(International Maritime Organization:IMO)や国際電気通信連合(International Telecommunications Union:ITU)へ働きかけた結果、1992年「DSC(Digital Selective Calling:DSC)技術を用いたトランスポンダー・システム」が、CCIR(現ITU-R)勧告M.825という形で初めて国際的な基準として決定された。
これがAISいわゆる海上交通用トランスポンダーの実現を具体化する大きな動機となった。