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操舵手はいたずらに高い周波数の外乱の影響(風、波による)に応答する必要はないから、船首角速度指示器はそれらを除去するいわゆる波フィルター機能を備えた方が良い。

 

(2) 巨大タンカー操船支援システムの必要性

以上の結果、特にタンカーが湾内等の制約された海域を航行する場合に操船を支援するシステムの開発が急務であるが、その要件としては

?現在位置の確認と避険線の設定、警告機能を備えた小型の位置確認システム:GPSシステムと組み合わせ、欧米のキャプテン、水先人はすでに活用している(図3.4-2)。

?操舵、変速時の予知能力の具備:作成する操縦モデルは造船所が行う水槽試験データが最も信頼あるデータであるが、推定も可能である[19]。すでに欧米の船長、パイロットの中には自分で開発したシステムを参考にしながら変針のタイミングなどを検討している例もある[18]。

?操船時の船首角速度の情報の表示:波などの影響がフィルターされた情報[21]が必要である。すでに多くの提案があり実現可能である。

?航行時の操縦性変化の察知:いわゆる操縦システムのリアルタイムモニタリングの開発であり、原理的には可能である[20]。

?操船計画の立案とその援助機能:現在のシミュレーション技術と制御理論の活用により可能である[21]。

等の機能の具備が望まれる。

しかし、問題は運航者側にもあり、開発されたシステムを信頼し、使いこなす技術と設計者にフィードバックする熱意が必要であることを今回の事故は物語っている。

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