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すなわち、(1.1)が正であれば針路安定、負になると針路不安定と判定される。タンカーなどのCBが大きい船や、幅広船は上記の指標が負側に寄っていることになる。

一般に、箱形船型のようにCBが増加すると、船舶の針路安定性は減少する。また、船の長さLと幅Bの比が減少する(幅広船)ほど、針路安定性は損なわれる。この動的安定性指数は、このように旋回初期の安定性と極めて密接な関係をもつが、良く知られた操縦性指数とも密接な関係をもち、次のように言いかえてもよい。すなわち、針路不安定船の操縦性指数のうち追従性指数Tが負になると針路安定度が悪い。我が国の造船所で最近建造された船は、このような針路不安定船は少ないが外国船には針路不安定船が現在でも多いことが知られている[5]。

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2)針路安定船と操縦性試験

ところで、このような針路不安定性は、通常実施される操縦性試験にどのような現象となって現れるのであろうか。

スウェーデンのSSPAでは、標準的な200,000DWTのタンカーを設定しその船型を中心にして船長/幅比L/Bを変化させたシリーズ、舵面積比を変えたシリーズ、Δを意図的に変えたシリーズのタンカー模型を作り、それら船型の変化の操縦性に及ぼす影響を調べている[4]。

?スパイラル試験

スパイラル試験はある舵角における定常旋回角速度を、舵角を連続的に変化させながら調べる試験で、初期の舵角方向と反対舵角に達した後、反転してもとの舵角まで船首角速度を調べてゆく。そして舵角に対する角速度がプロットされる(図3.1-16)。

まずそのような不安定度は、スパイラルテストにおけるループ幅(舵角0度付近のヒステリシス幅)の大きさとその高さ(ループ高さ)に現れる。

図3.1-17はシリーズ船型のスパイラル試験成績を示している。横軸は動的安定指数Δを示し、上図の縦軸は不安定ループ幅、下図の縦軸は不安定ループ高さを示している。

 

 

 

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