これらの実験値によると180度旋回時の定常旋回径は、Medium水域では18%であったものが、Shallow水域では、74%増となっている。また90度旋回時の横距は、Medium水域では、19%増であったもので、Shallow水域では88%増にも達している。
さらに、占有距離で測った縦距はMedium水域では平均してDeep水域と比べて8%減であるが、Shallow域では逆に13%増であることが分かる。また、最大占有旋回直径はMedium水域ではDeep水域に比べ16%増であるが、Shallow水域になると、61%に急増している。
すなわち、浅水域では旋回径、縦距、横距ともに大きくなることをこれらの実績値は示している。またこれらの図から見る限り、なんらかの理由で浅瀬となす角が約45度で進入している時、船首前方1km手前でその事を察知しない限り浅瀬をさけられないことが分かる。90度で進入した場合は、浅瀬付近ではh/Tが小さくなることを考えると1kmを残すのみではもはや遅いことになる。
3)加速度旋回の有用性
港内操船においては変針を低速で行わねばならない場面が多い。低速時や惰走時あるいは逆転はプロペラ後流が弱く、舵への流体流入速度は遅い。この時、プロペラを一時前進方向に回転させて回頭させる加速度旋回(Acceleration Turnもしくは、Boosting Turn)が効果的である。
図3.1-10は、先に示した278,000DWTのタンカーが浅水中を対水速度0(プロペラ回転数ゼロ)の状態から、前進回転数56rpmとし、舵角を35度にとった時の旋回性能を表している(Medium Depth、Shallow Depth)。ここで、SWEPT DIA.とは旋回中の船舶が占め