4. 小型舶用ディーゼル機関の2段過給装置
ヤマハ発動機株式会社
舟艇事業部 技術室
吉村 強
1.目的及び背景
小型レジャー艇の主機関は、釣り場の遠隔化に伴いガソリン機関から燃料費の安いディーゼル機関に移行している。航走性能を同等とするために、ディーゼル機関では一般的に過給機を装着して重量当たり出力を高めている。しかし、過給機自体の慣性質量のために急加速時には低回転域で追従遅れが生じ、必要空気量が確保出来ずトルク不足となってプレーニング性能が著しく劣ってしまう。
一方、漁船に於いては、漁労のために低回転域で高トルクの負荷取り出しが必要とされる。排気量の小さい過給機付機関では、空気量不足となり濃い排気煙を排出し作業環境の悪化に継がっている。しかし、大型機関への換装は経済的にも容易ではなく且つ、省エネルギーの世の中の流れに逆行する。
このような背景から機関本体を大きくすること無く低回転域でのトルク向上を図る手段のひとつとして、過給機を1個作動から2個作動へと切り替える2段過給装置の研究開発を実施した。
2. 実施内容
2-1 システム調査、検討
2段過給装置のシステムは、国内外メーカーの自動車用ガソリン機関では低中速域のトルク向上を目的とし既に量産されている。それらを参考に小型舶用ディーゼル機関用としてのシステムを検討し、以下の方針にて実施することとした。
(1)自動車用ガソリン機関でのシステムをベースとしできるだけ簡略化を図る。
(2)舶用機関は自動車用に比較して機関の加減速頻度が少なく、運転時の負荷の変動頻度も少ないため 過給機の切替は機関回転数のみで制御する。
(3)自動車用機関では複雑な制御を必要としている過給機切替時のトルク落ち込み対策の2段目過給機の助走(過給機の繋がり時2段目過給機の回転数を切替前に予め上げておく制御)は、排気切替パルプを徐々に開けることで対応する。
(4)目標性能
当社生産モデル(SW420KSH)をベースとし[表.1]
・ 最大出力は現行生産出力を確保する。
・ 機関回転数1500mにおけるトルクを50%UPする。