ていないため、これまでのところは600,000cStを超える粘度を有するダンパーは比較的使用されていない。
シリコン油使用のダンパーでは、サイズモ系質量要素がバネやゴム要素を介してハウジングに連結されているものがよく知られている。こうしたダンパーでは、弾性特性と粘性特性の間に物理的関係がない、つまりそれぞれ単独に選定(最適化)できるという利点もある。しかし、この種のダンパーは、純粘性ダンパーや純ゴム・ダンパーに比べ複雑であるため、舶用小型エンジンには比較的使用されていない。参考資料[8]と[9]を参照されたい。
3.エンジン回転不規則性とミスファイアによるねじり振動
エンジン回転不規則性
舶用設備のねじり振動を算定する場合は、すべてのシリンダから発生する質量およびガスの励振トルクがまったく同一とみなされるディーゼル・エンジンが理想的エンジンと考えられている。つまり、エンジンを剛体とみなすことができる場合の振動に関しては、重大危険速度というものしか発生していない。たとえば4行程の6気筒エンジンの場合には、そうした励振は重大危険次数3、6、9からしか発生しない。幾何公差、燃料噴射量の差、その他同様の要因に左右されるため、すべてのシリンダから発生するガスおよび質量励振は正確には同一ではない。こうした現象はしばしばエンジン回転不規則性と呼ばれている。この現象は、エンジンが剛体として行動する振動モードでも、重大危険次数以外の次数による励振が発生する可能性があることを意味する。
もちろん上述の一連の問題はこれまでも常に発生していたが、それらが重大視されるようになったのは高性能エンジンが出現してからのことである。その理由は、ディーゼル・エンジンの平均圧とチャージ圧の増大に伴い、低次数の励振トルク(0.5、1.0、1.5、2.0)が多少増大するからである。参考資料[10]を参照されたい。低次数の励振は、通常最大振幅を示す上に、そうした振幅により駆動系に共振が励起されるために、特に深刻な問題となる。
船舶用動力系の設計においてディーゼル・エンジンを理想的とみなしても、実際には駆動系に予想外の共振速度が発生する。こうした共振速度が実際の運転速度範囲であっても当初は、たわみ継手、鋼製バネ継手、大型フライホイール2個などの防振機素に対する荷重が予想以上に大きくなる。ねじり振幅が大きくなると、ギアのがたつきやその他の騒音・振動問題が発生する場合が多い。たわみ継手における特に深刻な問題は、ゴムの強度が比較的低い場合にしばしば重大な破断に至ることである。エンジン・クランク軸と振動ダンパーにおけるねじり振幅は、通常、エンジン回転不規則性の場合ほど大きくない。
図12に示すようにモデル化された船舶用設備の場合のねじり振動の計算は、理想的エ