ルについて概説する。ここでは、エンジンの内部減衰と、クランク軸振動ダンパーの最適同調化の重要性を特に重視した。第3章では、エンジン回転不規則性とミスファイアにより発生するねじり振動について検討する。この場合、エンジン回転不規則性とはエンジンのシリンダ圧に生ずる確率的変動(燃料噴射量、幾何公差などの変動により発生する)を意味し、エンジンの一次危険速度のみならず、エンジンの二次危険速度を発生させる原因ともなる。最後の第4章では、舶用推進システムからのトルク励振により発生するねじり振動について解析する。ここでは、ディーゼル・エンジンとプロペラによる励振間の干渉現象に関する研究に特に目を向けた。
1.分岐系における定常ねじり振動の解析方法と解析用コンピュータ・プログラム
ソフトウェア・コード開発の背景
Volvo Penta社では、1970年中頃に早くも、定常ねじり振動の算定方法とその算定用コンピュータ・プログラムが十分確立されていない点に気づいていた。しかし、コンピュータ技術の発達に伴い、コンピュータ解析方法の採用がますます普及するようになった。多くの自由度に関する線形問題は、マトリックス表記法により簡単明瞭に書き込めるようになった。1970年代中頃でも、船舶業界のほとんどの技術者は1950年代以前に開発されたねじり振動解析方法を採用していた。この問題に関する代表的な参考文献としては、参考資料[1]と[2]に記載したものがある。当時は、コンサルタントや下請け業者が計算を行っていたので、通常基準にしていたのはHolzer法であった。参考資料[2]、[3]、[4]を参照されたい。しかし、Holzer法では、固有振動数から強制振動数応答(ガス・トルクや減衰も含む)に至るあらゆるものを導入できるため、この方法も確実な規範とはならないことが、業界内でも認識されるようになった。
また、Holzer法にはいくつかの限界があることも判明した。とりわけ、質量要素、連結部、分岐部を多く備えたギヤケース付き動力系の解析は複雑な作業となる。
1978年に新しいコンピュータ・コードの開発が開始された時には、上述の経験や研究結果が重要な入力情報を提供した。特定計算方法の検証用として最初に製造されたのは、直線車軸分岐部の原型機である。この計算方法はさらに分岐系にも適用された。分岐系向けの完全なコンピュータ・プログラム(Volvo Penta社開発のTORVIB)が発表されたのは、1981年のことである。
システムの構造
このシステムは、集中慣性、ねじり剛性、歯数比、減衰要素などを導入して普通の方法でモデル化したものである。減衰要素は、慣性質量要素(軸減衰)とその周囲要素(質量減衰)の間に置くことができる。減衰要素は減衰係数、増倍係数もしくはその両方として