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5.検 討

希望の最適値に達するまで何度も繰り返すルート選定最適化アルゴリズムとは異なり、TNSSでは航海士の専門技術と専門知識に頼り、検討すべき1本ないし2本以上の航路を提示する。オペレータとしては、氷山や海氷密度といった適当な情報マップをオーバーレイとして使用して2種の危険の相互作用を最低限に抑えるという利点が得られる。同様に、船舶の速度をより高速かつより安全な速度に維持できるように、漁船団から船舶を分離できるルート選定プランもある。

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専門的判定方法を採用すれば、簡単な航路は数分で分析できる。97航跡からなるセント・ローレンス川の航路プランは、486型コンピュータにより20分間で処理できる。この時間の大半は、航跡から最も近い浅瀬(原型機では海岸線が使用される)までの最短距離を算定するパラレル・インデックス・モジュールが費やす時間である。走行時間の算定回数を減らすために、研究対象区域内の各グリッドごとに浅瀬までの距離を前処理したので、浅瀬までの最短距離が20海里未満の航跡のみに対してパラレル・インデックス・ルーチンを実行することになる。

このシステムでは、従来「航行方向」を使用して実施してきた各種プラニング機能の一部を導入しているので、航路プランを拡大できる他、慣れない水域で航海士が経験する予期せぬ事態を一部でも回避することもできる。局所的知識に代わるものではないが、情報に通じた航海士ならば、水路上で認識されるリスクではなく、水路上の実リスクを予知する可能性が高い。セント・ローレンス川の港や狭い水路、カナダ領北極海の氷で覆われた海域では、こうした機能が特に必要不可欠となる。

船舶リスク・モデルの目的は、座礁、衝突または追突といった大事故とこうした事故に至る恐れのある起りやすい一連の基本的事象を連係させることにより、最も発生確率の高い行動方針、状況及び結果を明らかにすることにある。Institute for Risk Research(リスク研究所)では、こうしたモデル設計を「フィードフォーワード・フィードバックワード」関係と評してきた。たとえば、ある航跡上で疲労原因となる基本的事象は、次の航跡

 

 

 

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