清浄な流体であるので、LNGポンプ上のこうしたフィルタは、早期疲労の恐れのある軸受に重い粒子を通さないために使用する。
貨物用ポンプのモータ固定子は、けい素鋼の成層鉄心に銅線をしっかりと巻つけたものである。これらの銅線は被覆し、完全に補強した上、エポキシ樹脂によるVPI(真空/加圧含浸)サイクルに2回通したものである。モータ回転子はけい素鋼の成層鉄心と鋳造または組立式アルミニウム製ケージ(かご)からなる。ケージ両端のキャップは頑丈なもので、回転子の釣り合い部品となる(by removal of material only)。この種のモータでは、空冷式モータに必要な内部ファン装置を必要とせず、それよりも優れた直冷方式により、同様の空冷式モータよりも小型である。
図3には、流体の冷却経路と潤滑経路が示されている。
LNGの粘度と基本潤滑特性は低い(通常0.14cP)ので、確実な運転を行うためには軸方向と半径方向の荷重レベルを極めて低くしなければならない。低粘度は、流体の低い温度にある程度助けられて問題とはならない。この低温流体は軸受とモータに優れた除熱効果を与えると共に、ポンプに安定かつ清浄な運転環境を与える。こうした利点は、ほとんどの船上ポンプ/モータ装置からは得られない。とりわけデッキ上や機関室内の燃料遠心分離機の近くに設置されてモータからは、確かにそうした利点は得られない。
液化天然ガス用ポンプにインデューサを採用したため、LNGの液面が吸込側ラッパ口のちょうど上になるまでLNGの吐出しを行える。この特性は、低温試験でも船上でのLNG試運転でも実証ずみで、船舶設計の経済性に欠かせない要素である。最新型液圧設計と頑丈な機械的電気的設計のもう一つの利点は、こうした液面までタンク内の液排出が繰り返されるため、乾ドック入りまでの期間に定期保守作業を必要としない点である。
LNG用液中モータポンプを採用した場合の重要な一面は、液体が優れた誘電特性を示すことである。つまり、ポンプ接続箱の中とタンクの電源フィードスルー・アセンブリにおける電気接続部をポンプ輸送される流体から絶縁する必要がないというわけである。事実、ポンプ接続箱はLNGが充満するように設計されている。
LNG用ポンプの設置
精確に言えば、設置方法は貨物封じ込めシステムの設計に応じて異なる。現在は3種の貨物封じ込めシステムが使用されており、タンク内の構造物にポンプを取り付ける方法もケースごとに異なっている。つまり、貨物封じ込めシステム、ポンプ及びその支持構造物と吐出管の収縮率に合わせた設計が必要になる。図1では、液化天然ガス輸送用薄膜型封じ込めシステムの代表的設置状況を示す。
ポンプ・メーカーから納入された電気システムは、タンクの「ドーム」近くに取りつけられた防爆水密型電気接続箱を介して甲板上の配電システムに接続される(詳しくは図5参照)。電気接続箱はさらに船舶用たわみ装甲ケーブルにより電気フィードスルー・システムに接続される。このフィードスルー・システム(図5及び図6参照)は、その信頼性を高めるためと、紫外線、海水、腐食海洋環