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そのため、使用部品数をできるだけ減らした単純な設計が可能となり、液中モータポンプをコンパクト化かつ軽量化できる。タンク貫通部の数も削減化され、設備全体の基本的安全性も向上する。船舶装備用の液中モータポンプは、基本的には固定設置型と引込み型の2種類がある。本記事では貨物船用固定型ポンプについて述べる。引込み型ポンプは、吸込弁(フート弁)とは別のコラムに取りつける。この吸込弁により、タンクが液体で充満した時にポンプの設置と取りはずしを安全に行えるようになる。ポンプを使う以外タンクから液体を排出する手段がない場合には、この「引込み型」ポンプが特に役立つ。

 

船舶用LNGポンプの設計と構造

この種のポンプは、LNG輸送船の貨物封じ込めタンク内に固定し、(図1参照)タンク内の貨物配管系統に直接連結して支持し、専用電源ケーブルから給電する。この電源ケーブルには、甲板上の配電システムから専用の気密フィードスルーを介して給電される。図3は、代表的な最新型貨物LNG輸送ポンプの構造を示す。このポンプは主として次の構成部品からなる。

・ 液中に完全に浸漬した電動モータ・ポンプ装置。回転装置の機素は、いかなる種類の継手もシールも使用せずに単駆動軸に取り付けられている。

・ EIC社の独創的なスラスト釣り合い機構TEM(商標名)を取り付けた一段型または多段型羽根車。

・ 潤滑方式軸受。

・ 最新型スパイラル・インデューサ。

・ このポンプは、船級協会規則に従って審査かつ製造されたものである。

・ 設計と製造方法は、船級協会の規則に基づき、LNG中において全速度で実施された工場試験に合格したものである。

ケーシング全体とポンプの機素は航空宇宙用アルミニウム合金鋳造技術で製造されたものである。この点とコンパクト設計により、比較的軽量だが、耐久性のあるポンプになっている。TEMは、正常運転時に軸受にかかる油圧スラスト荷重を無視できる程度に抑え、軸受の寿命を延ばすと共にその信頼性を高め、コストの高い専用スラスト軸受の使用を不要にする。このTEMは独創的なシステムであり、運転時の油圧スラストを動的に均衡させる。(1994年1月号の“World Pumps"話、「低温貯蔵液用最新型液中ポンプ」を参照されたい)。

軸受用潤滑油とモータ冷却液の流れはそれぞれ独立したもので、ポンプ内の液流やスラスト釣り合い機構へ逆流することはない。軸受用潤滑油とモータ冷却液の流れは、羽根車から得られる静圧により発生し、各種オリフィスを通って減圧され、低圧点(通常はタンク)へ戻る(図3参照)。

主軸は低温下でも安定している特殊ステンレス鋼製の一体型のものである。この主軸を支える軸受は、特許権を取得した構造設計の製品潤滑式ころがり軸受である。軸受用潤滑油は、下部軸受用が回転フィルタでろ過され、上部軸受用が単純な自浄型メッシュ・フィルタでろ過される。LNGは本来

 

 

 

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