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(WORLD PUMPS 1996年9月号)

 

5. 液化ガス船荷のための液中電動モータポンプ

 

本記事では、船舶用ポンプという特殊領域を扱う。この種のポンプは世界中であまり使われていないが、輸送のむずかしい各種液体の海上輸送には大いに役立つものである。液化ガスは通常高い蒸気圧に特徴がある。それゆえ、輸送量をできるかぎり増大するために、液化ガスを冷蔵液にして大量輸送できる封じ込めシステムが設計されている。

液化天然ガス(LNG)の輸送は1960年代初期から行われてきた。当時、欧州では安価なエネルギーの供給量が不足していた。ラインシャフト・ポンプの採用では次のような深刻な問題が生じていた。

・ 爆発型モータが大きい。

・ メカニカル回転シールと密閉システム。

・ モータ専用の軸受システム。

・ 連結部のアラインメント。

・ 長い駆動軸用支持システム。

・ 温度差のマイナス効果。

・ シール・システムの保全性とガス漏れや(さらに悪い)液漏れによる災害。

こうした問題を解消するために、数台のポンプを使用した確実な解決策が発見された。それらのポンプとその駆動モータ及び羽根車とを同じ駆動軸上で機械的にしっかりと連結し、共通のハウジング内に入れ、それを液化ガス中に完全に沈めて運転するという方法だ。こうしたポンプ、もっと正確に言えば液中モータポンプは、すでに30年間にわたって液化ガス輸送船に使用されてきた。現在、こうした輸送船は当初のものに比べ3倍も大型化しており、それらに装備されるポンプもほぼ50倍も強力なものになっている。これまで液化ガス輸送船では、いずれも440V、60Hzの電気系統を採用してきた。しかし、6.6kV以下の供給電圧に対しては、すでに陸上輸送で使用されている実証ずみの電気系統も使用できる。

こうしたポンプとモータの設計は、用水、下水、各種化学薬品のポンプ輸送に使用される見慣れた「キャンド」モータやシール型ポンプとは著しく異なる。それらは、モータキャンを介して間接的に冷却したり、シール型ポンプのように空冷したりせず、ポンプ輸送される流体により直接冷却される。この直冷方式ではモータの運転効率が高まる。ポンプ輸送される流体(温風ではない)の冷却特性のおかげで、特定出力のモータは同一出力の空冷式モータに比べ大幅に小型化される。液中モータは、湿気や腐食といったマイナス効果を防止することもできる。ポンプ輸送される液体によりモータ内が一定温度に保たれるため、温度変動によるモータの断熱力低下を防止することもでき、設備の信頼性と寿命は大幅に増大する。

 

 

 

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