載貨スペースはさらに拡大している。Grenco社によると、この床格子の高さは開放型中甲板(軽甲板)と空気循環速度90回/時にしては異例の低さだという。上述の研究開発の結果、ファン出力を増大させずに空気の流速(25m/秒)も高速化されている。
「パシフィック」号は、IDACも含めたGrenco社の第2世代の主要技術を導入した新型船だが、この技術は温度許容範囲を非常に厳密に維持できるものだ。しかし、この新型冷蔵船では、エンジン制御室内だけではなく、圧縮機上とクレーンの下の2つの甲板室内にもマイクロプロセッサ制御ステーションが配備されている。Grenco社によると、「こうした設計により、すべての制御プロセスにコンピュータ・システムを1基しか使用しない他、van Diepen社はケーブル配線をかなり削減化できたはずだ」という。今日、van Diepen社のような欧州の造船所には、船主からと日本の造船所との競争から大きな圧力がかかり、経済性の高い船舶を建造せざるを得なくなっている。そのため、「パシフィック」号は、コンピュータのキーボードと表示画面を使用し、最先端の冷蔵船技術で制御された実に単純な貨物船に仕上がっている。
機関室内にある復水装置数基の制御装置は調速システムに組み込まれている。各復水装置は、マイコン制御のスクリュー型圧縮機、海水冷却式復水器、電動機、油圧回路(合成油用)によって構成され、Grenco社により完全に組み立てられたものだ。
未来の冷却剤はR407Cか?
冷却装置は、世界中で使用されている経済性の高いR22冷却剤を使用するように設計されている。
しかし、モントリオール議定書(Montreal Protocol)の下でR22冷却剤(HCFC物質)の使用が段階的に禁止されるため、R407Cへの切替えを義務づける規定もすでに制定されている。R407Cは、現在懸案中の環境にやさしい冷却溶液で、熱力学的にもR22に最も近い。もう一つの魅力的な代替冷却剤はアンモニアだが、毒性があり、直接膨張方式には向かないうえ、二次冷却剤(通常は塩水)が必要となる。
R407C(DuPont社ではSuva 9000、ICI社ではKlea 66という商標名で市販している)は、オゾン層破壊の可能性がゼロで、地球温暖化の可能性も極めて低いうえ、無毒で非可燃性の物質であるがzeotropic性がある。つまり、蒸気漏れや液漏れが生ずると、その組成を変えることがある。もっとも、R22システムでもすでに年間10%までの蒸気漏れや液漏れが生じているので、船舶業界ではこの問題を余り重大視していない。実用面では、総体的に冷却装置の冷却能力と出力に若干の変動が生ずるが、電動機の出力を3%ほど増大させるにすぎない。
Grenco社では、「財政面から見ると、アンモニア/塩水冷却システムを採用するよりもむしろ、R22/R407C直接膨張システム(将来は下落するだろうが、現在のR407C価格は高いが)をGrenco社のIDAC制御システムと併用する方が運送業者としては投資額を大幅に節約できよう」と主張している。アンモニア/塩水冷却システムは、設備面では39%ほど割高になるが、冷蔵船全体では3%程度のコスト高にすぎない。しかし、Grenco社では、「パシフィック」号を初め、オランダの巨大トロ