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Wartsila Diesel社の客船用主機開発計画では32型と46型エンジンが成功を収めたが、1993年にはそれに38型エンジンも加わった。この新型エンジンは、ターゲット市場の巡航船部門とフェリー部門でたちまち好評を得た。

シリンダ内径380mmとピストン行程475mmのエンジンは、900回転/分において1気筒当たり600kWの定格出力を有し、6L〜V18気筒型機で3,960kW〜11,880kWの出力範囲をカバーするが、同一出力クラスの他の中速度エンジンに比べ軽量小型化する必要に迫られている。

遠洋航海船を就航させるために初めてWartsilaと社の38型エンジンを装備したポーランドの海上輸送業者からは、優れた運転実績が報告されている。ノルウェーの造船会社Langs-ten Slip社が昨夏納入したUnity Line社のバルチック海航行フェリー(旅客・自動車輸送用)は、6気筒エンジン4基からなる出力15,840kWの2スクリュー型主機を装備している。

それ以降、大型巡航船市場では目覚ましい飛躍が認められる。Kvaerner Masa-Yards(KMY)社からCarnival社に納入される"Fantasy"級の最新型巡航船2隻は、47,520kWの出力を出せる12V38型エンジン駆動の発電機6基を装備した電気式ディーゼル船である。"Fantasy"シリーズのこの第7号と第8号船は、電気式ポッド格納主機Azipodが定期巡航船に初めて搭載されるため記念すべき初就航となる。

各シップセットは、これまで"Fantacy"級トン数の船舶に装備されていた複式のcp型プロペラ、シャフトライン、内部主機、ラダー、ステアリングギアなどに代わり、14MWのAzipod装置2基が装備されたものとなる。これまでの仕様による1.5 MWのトランスバース船尾スラスター3基も不要となる。

 

主機の方位設定

主機Azipodは、フィンランドのKMY社とABB Industry社が5年の歳月をかけて開発したもので、固定ピッチプロペラを直接駆動するAC電動機が組み込まれている。定格出力20MW以上のこの電動機は、周波数コンバータにより1〜300回転/分の代表的速度範囲において全出力をいずれかの方向に制御する(低速度の場合も含む)。

主機全体は360度までの方位設定を行えるような構成になっている。そのため、プロペラを逆転させたり、垂直軸を中心に回転させることにより優れた操縦性が得られる。また、船舶の低速度時にあらゆる方向への全出力推進も可能だ。プッシュ型とトラクター型のAzipod主機も提供され、ノズル付きやノズルなしのAzipod主機も製造できる。

河川の砕氷船や載貨重量16,000トンの北極海航行タンカーにAzipod主機を装備した場合の優れた運転実績も報告されている。特に後者の改良計画では、出力11.4MWのAzipod主機を装備する。

新しい船舶の建造計画を立てている定期巡航船運行業者の間では、桟橋に横付けする時や投錨時に速やかに停泊できる高性能の操縦性を求める声が高まっている。接岸しにくい新寄港地を航行計画に組み込む場合も、そうした機能が重視される。

“Fantasy”級定期船の型式試験からは、当然のことながら、在来型のプロペラと舵を装備した船舶

 

 

 

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