(MARINE PROPULSION 1996年4月号)
3. クルーズとフェリー市場を目標とするエンジンの多様性
客船用主機市場の主力は依然中速度の電気式ディーゼル・エンジンだが、ガスタービン・エンジンもますます重要視されつつある。 タグ・ウッドヤード報告。
新たに建造される定期巡航船や旅客フェリーの間では、電動式変速系統でも、機械的歯車変速系統でも、中速度ディーゼル推進方式が王座を占めている。船主に対しては、エンジン設計会社からシリング内径の異なる多種多様な原動機が提供されている。そうした設計会社としては、GMT社、KruppMaK社、MAN B&W Diesel社、New Sulzer Diesel社、SEMT-Pielstick社、Ulstein Bergen社、WartsiaとDiesel社などがある。
New Sulzer Diesel社では、昨年、ZA40S型エンジンのシリンダ内径を拡大した新製品を発売して地歩を強化した。ZA40S型エンジンは長年の間巡航船とフェリーの主機市場を支配してきたが、今やWartsia社の46シリーズやMANB&W Diesel社の48/60シリーズといった最新型競合製品からますます厳しい挑戦を受けている。
同社の計画では、シリンダ内径500mm、ピストン行程660mmの新しいZA50S型機でシリンダ内径400mmの旧型機を補足する予定だ。この新型機は、6L〜V18型シリンダを使用し、450回転/分において最高21,600kWまでの出力を出す。ZA50S型エンジンを装備すれば、気筒数の少ない機種に対する出力強化ニーズを満たすこともできる。また、この新型機は、競合製品に比べエンジンを小型軽量化して装備を一層コンパクト化する必要にも迫られている。
回転ピストン
現在、GMT社の改良型A55型中速度エンジンでも、ZA40S型機やZA50S型機と同様、独創的な回転ピストンというコンセプトが採用されている。シリンダ内径550mm、ピストン行程680mmという設計は、6L〜V18気筒型機で最高22,500kWという出力ニーズを満たしており、GMT社の親会社Fincantieriグループが建造した大型巡航船には特に適している。
フランスに本拠を置くSEMT-Pielstick社では、現在その中速度エンジン部門がMAN B&W Diesel社の傘下に置かれているが、最近シリンダ内径400mm(PC2.6B型)と570mm(PC4.2B型)の最新型エンジンを開発し、フランス国内と日本のフェリー市場で順調に業績を伸ばし続けている。
今年は、日本の「すずらん」向けにこのエンジンを出荷する予定だ。「すずらん」は、総トン数17,300トンの長距離沿岸航行フェリー(旅客・自動車輸送用)2隻のうちの1隻で、これまで発注された最強の中速度エンジンを装備している。これは、日本のDiesel United社がライセンス建造したV18型シリンダのPC4.2B型エンジン2基からなり、それぞれ410回転/分で23,850kWの出力を有し、30ノット近くの最高速度を出す。