生産と材料の選択
モータの電磁気性能に好適である利用可能な磁性材料には、インペラ・ベーンを構成する材料としての重大な欠点がある。作動対象となる液体、すなわち塩水は多くの物質を腐食させやすく、そして候補となる磁石のうちには化学的に反応しやすいものもある。ベーンは流体の動的な力や遠心力ならびにモータの磁力に耐えるため十分な強度を有さなければならない。しかしながら、候補となる磁石のうちには堅いがもろいものや、機械的に弱いものもある。有用で効率的なインペラを造ることは可能なように見えるが、かなりの難題となるかもしれない。
磁気ギャップ、すなわち非透過性材料や塩水(または空気)を通過する磁束の経路の長さは最良な磁気性能を得るためには可能な限り短くすべきである(図12参照)。磁石と固定子との間に置かれるいかなる構造要素(応力支持板のような)もこの寸法を増大させてしまう。加えて、もしその板が電気導体材料で造られる場合は、磁界の変動によって、性能を劣化させる渦電流が生じるかもしれない。
インペラ内の応力を十分小さく保てるならば、炭素繊維を充填したPPSのような構造プラスチックのインペラの成形が可能になるかもしれない。そうなればそのプラスチックを磁石の周囲へ直接射出成形して、化学的に密封された単一ユニットを形成できる可能性もある。それ以外にもインペラ・ベアリングとしても役立つかもしれない。(PPS/炭素は類似した用途のある種の化学ポンプである、ギヤポンプのインペラ歯車に実際に使用されている。)
別の可能性のある構造を図13に示す。中空ベーンは2つのエンドプレート間に溶接(可能な限り電子ビーム溶接)取り付けされる。類似した構造はすでにある種のジェットタービン固定子ベーンに使用されており、中空ベーンを通過する空気流で冷却される。あらかじめ防錆被覆された磁石部がベーン内部へ位置決め、接着される。それから、必要に応じて薄板がエンドへ接着またはリムに沿って溶接、もしくは両方が施される。使用中の磁石に渦電流の発生を防止するため、選択される材料によっては、ベーンヘスリットを設け、それへ非伝導性プラスチックを埋めることが必要になる場合もある。この種の構造はその優れた熱伝導性と熱容量のゆえに塩水への使用に不可欠というよりは、むしろ他の用途に適する可能性もある。しかしながら、チタンもしくは高抵抗性ステンレス鋼(Carpenter 20Cb-3または22Cr-13Ni-5Mnのような)が薄い両端部を有するベーン構造に使用される場合は、熱伝導性はスリットを設けなくても充分に低くなるであろう。またブレード内部のエリアを通じて一方向への磁束の変化は、別の領域内での、またブレードの伝導ループ内での逆変化によって常にバランスが取れたまたはバランスに近い状態にされ、したがって渦電流の取り消しを生じるような方法でベーンや固定子を設計することも可能になるかもしれない。
可能な横壁の異種構造を図14に示す。この方法では、磁石と固定子との間の低浸透性、低伝導性鋼(300シリーズ・ステンレスのような)の囲い板内へ高浸透性鋼の象眼(inlays)が位置される。これらの高浸透性の象眼は横板を横切って磁束を導き、磁気ギャップを増大させることなく大きい機械的強度を生じる。象眼は囲い板へ溶接またはろう付けされ、さらに錆耐性を増すためにメッキまたは被覆される。
言うまでもなく、磁石を通じての磁束の変化は作用流体(塩水)内のベーンを取り巻く渦電流ルー