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(NAVAL ENGINEERS JOURNAL 1996年5月号)

 

2.水中使用新型統合電気モータ/ポンプの実用化研究

Dr. C. Peter Cho & William P.Krol,Jr.

 

要約

この論文は軸界磁、永久磁石モータを遠心力ポンプに結びつけるという、新たな電気モータ/ポンプ・システムの可能性を探る研究の結果を示す。モータの永久磁石(PM)回転子とポンプ・インペラ・ベーンとが単一体であるこの独特なシステムによって、騒音、振動、体積の減少が設計の主目的である水中使用に適した、コンパクトかつ高信頼性、低騒音、大出力密度の電気駆動式遠心ポンプが実現する。集中パラメータ磁気回路モデルに関連する2次元/3次元の有限要素分析(FEA)モデルを用いて、電磁気分析のための性能条件の取捨選択考量(tradeoff)が行なわれた。この研究結果からわかったことは、新たな統合電気モータ/ポンプの概念を用いることで、理論的には(1)体積や重量の大幅な縮小とともに最大73%の電磁気効率が得られること、(2)低騒音及び高性能実現の可能性とともに、出力密度や信頼性がきわめて増大することを示す。またこの研究は、優れたコンピュータ・モデリングやシミュレーション技術を活用することで、新たな概念の探求が可能であるとの証明ともなる。

 

はじめに

水中ビークルのコンポーネントやシステムの設計にあたっては、スペースがその設計を支配する重要要素となる。その任務ゆえに、スペースがとりわけ重要要素となるのは米国海軍(の潜水艦艇)である――有効搭載量(ペイロード)を最大に、かつ検知される可能性を最小にすることがなにより重要なのである。

従来の電気駆動式遠心ポンプセットは、電気モータ、継手、遠心ポンプで構成されている(図1a)。潜水艦艇に使用する見地からは、そうしたモータ/ポンプ・セットには3つの大きな短所がある――(1)スペースを占める割に体積的な出力密度が低いこと、(2)角振動を生じるねじれ共鳴、(3)3つの要素が受動的機械軸で結合されるため、騒音や振動を体系的に制御できる可能性が低いこと、である。この論文では、これらの障害を除去して、米海軍の潜水艦艇が効率改善と騒音減少を実現できるよう、新たなモータ/ポンプ・システムの概念(図1b)についての取捨選択考量研究を取り扱う。

この研究に使用される方法は集中パラメータ磁気回路方程式に関連した2次元と3次元のFEAモデルである。FEAモデリングとシミュレーションを行うことで複雑な幾何学を使う面倒な電界磁計算及び電磁力と構造振動との相互作用の予測が可能となる。電磁気力関数と構造応答との間の基礎物理的特性が決定されたならば、電気モータの相巻線電流の波形が制御可能となり、それによって騒音/振動の除去や、望ましくない力の分布を補正することが可能となる。この論文では軸界磁モータと遠心ポンプについての記述、遠心ポンプ付きの新型統合電気モータの説明、電磁気の取捨選択考量研究の結果、生産や材料選択における考慮事項を扱う。

 

 

 

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