TAMD163A
Volvo Penta社は1994年に売り出されたTAMD163Pの成功に続いて、次のバージョンとしてTAMD163Aを発表した。これは漁船、フェリー、内陸水路船などの厳しい条件下でのヘビーデューティ(HD)運転用に設計された推進機関である。また完全発電セット用などの補助的な目的にも適している。この機関は同社の製品開発部のたゆまぬ努力の成果であり、ヘビーデューティ/補助機関の製品レンジを充足させるものである。TAMD163Aは好評な16リッター・インライン・6シリンダ製品の最新のバージョンであり、最高等級要件を満たすように造られている。特徴とするのは、新設計の燃焼・冷却系統、新形オイルクーラ、インジェクションポンプとインジェク夕、改良形シリンダヘッドとコネクティングロッド、キーストンリング付きピストン、及び新形ターボチャージャである。
開発努力の成果として、信頼性と耐久性が高く、低燃費で排気が少なく、性能の優れたこの機関が生み出された。HD運転時の出力は1,800rpmで405kW(550馬力)である。最大トルク定格はHDバージョン1,200rpmで2,520Nmである。補助電源に使用時の出力は1,500rpmで380kW、1,800rpmで428kWである。
TAMD163Pの成功を基礎に造られたこの新型機関の引渡しは96年晩秋ころになるであろう。
TAMD72P EDC
新型の「インテリジェント」なTAMD72P EDCの発表と同時に、Volvo Penta Marine Commercialは舶用ディーゼル機関の性能、快適性、排気削減ならびに設置や整備の簡易化について新たな基準を再設定している。
6シリンダ、直噴、ターボチャージャ、インタークーラー付きTAMD72P EDCはVolvo Penta社の高性能ディーゼル開発を目的とする進行中のプログラムから生まれた最新製品であり、その定格は2,600rpmで316kW(430馬力)である。その高性能の鍵となるのは、ディーゼル技術向上の重大な一歩となる電子式ディーゼル制御(ECD)の採用である。
電子式ディーゼル制御(ECD)
ECDは電子式に制御される中央処理装置であり、機関内の主要点に位置する監視センサー配列からの入力データを受信する。この装置は運転温度、気圧、及びその他の6種類の要素の変動を勘定に入れて、機関の効率を最適にするために必要なそのときどきの燃料の精密な量を判断する。ECDには電気作動式の舶用変速ギヤも含まれる。この新技術によって、機関作動が円滑に、運転操作は容易になり、煙や排気を減らし、アイドリングを低い回転数で安定させることができる。中央処理装置から直接データが入手でき、かつ制御・調整装置の運動部分の数を減らせるので、機関の整備と診断に要する手間が大幅に削減できる。
さらに、ECDによって従来の制御ケーブルが不要となり、全ての制御リンクは電気的接続となるため、従来の装置につきものであった機関や変速歯車箱からの騒音や振動が抑えられる。また、舵輪を最大7箇所までの違った位置へ容易に設置することができる。
性能の最適化
TAMD72P EDCの性能は、最新のディーゼル技術開発を用いることによってさらに最適化されている。この新エンジンは水冷却のターボチャージャを廃物ゲートと一体化させて優れた低速トルクを実現している。高圧燃料噴射は燃空比を最適化させる5つの穴を持つインジェクションノズルで行なわれて、他方で低いエア回転の使用で最適燃焼が図られている。その他の特長は、交換可能な湿式シリンダライナー付きの頑丈な機関ブロック、大きなジャーナルと7個のメインベアリング付きのクランクシャフト、油冷却ピストン、淡水を用いた水冷式オイルクーラー、及びキーストーン形アッパーコンプレッション・リングである。Volvo Penta Marine Commercialプログラムがカバーする全ての機関と同様、TAMD72P EDCも電気作動の後退ギヤをはじめ、その他の適合する装置や付属品が入手可能である。さらに、100を超える国々に点在する5,000のディーラーによって構成されるVolvo Pentaネットワークによる完全なバックアップサービスが充実している。