(HSB INTERNATIONAL 1996年6月号)
1.ボルボ・ベンタ・マリン社が舶用ディーゼル機関用に新しい標準タイプを設定
TAMD122Pは、Volvo Penta Marine社の最新の高性能機関である。これは同社の広く知られている製品、12リッター・インライン・6シリンダユニットの最新バージョンであり、直接噴射、ターボチャージ、アフタークールを組み込んだものだ。
この機関は水面滑走型船やその他の高速営業船舶へ取り付けるように設計され、信頼性が高く環境にも配慮した高性能機関である。トルクが大きいため、荷重変動に対する低感度はもちろんのこと、広い速度範囲にわたる良好な加速性と性能を実現している。煙や排気は少なく、また幅の狭い形状ゆえに設置(ツイン機関の設置を含めて)と整備のいずれもが容易に行える。
インライン配置
インライン配置はVolvo Penta社機関の特徴の1つであり、これによって航行が円滑に行われる。TAMD122Pのウエットライナーは交換可能であり、またキーストン形アッパー・コンプレッションリング付き油冷却ピストンを使用することで、オイル消費やシリンダ磨耗を抑えている。5-オリフィス・インジェクタを用いた直接噴射及びシリンダ内における渦の少ない燃焼とがVolvo Penta機関のすぐれた燃焼技術の重要な要素となっている。
こうしたシステムが効率的燃焼、低燃費、低排気を可能にしている。加えて、淡水を用いた水冷却ターボチャージャは新式のアフタークーラーを備えており、効率、気流、冷却能力の増大が図られている。
この新機関の他の特徴としては、ツイン式フルフロー・オイルフィルタ、アクセス容易で効率的なペーパーエアフィルタ、2極船舶電気系統、スモークリミッタ付き高圧燃料噴射ポンプ、浅いアルミ鋳物サンプなどが挙げられる。
新機関の出力はVolvo PentaのSLD(Special Light Duty)定格2,250rpmで441kW(600馬力)、LD(Light Duty)定格2,100rpmでは390kW(530馬力)である。出力は2種類の変速機――MPM/1RM 311 A(変速比が1.5:1、1.8:1、または2.0:1)及びツインディスクMG 5111 SC(変速比が2.0:1または2.5:1)――の選択によって決定される。
Volvo Pentaの舶用市販ディーゼル機関製品は73kW(100馬力)から565kW(770馬力)の範囲を網羅しており、それらの機関へ適合するさまざまな付属品が揃っている。またVolvo Pentaは全世界にサービス網を展開しており、専門的な取り付けサポート、コンピュータによる費用計算、適時部品サービス、予防整備サービス契約などからなる「コスト管理プログラム」を含むアフターサービス・パッケージも充実している。