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この強化繊維により、結果的に管壁はSIWHPとライザー頂部張力とによって生じる軸方向荷重に十二分に耐える強さを持つ。

円周方向及び低角度螺旋方向層の厚さが構造面からの要求で決まったので、次に最終的な管壁について外部圧力の耐座屈性能を予測/解析した。この中で、管座屈の予想圧力が水深5000フィートでの要求値以下である事が判り、その結果、中間に複数のEガラス層を付け加え管壁の厚さを増す事となった。これらの層は実質的に核となる材料として働き、内側と外側にある炭素繊維強化層の間隔が拡がるので横断面の安定性が増加する。

 

複合材/金属材の境界;複合材を使用する上で、複合材と金属材の継ぎ手は複合材構造設計上、常に挑戦の連続である。根を持ったフィラメントを巻いて出来ている複合材と等方性鋼材の材料特性の違いからその製造工程と部品形状には特別の注意が必要になる。その手法として使用場所、使用負荷に応じて数多くの接着法が紹介されているが、手法によっては張力負荷には強いが圧縮やねじり負荷にはそれほど利点がなかったりする。また別の手法では複合材管が固まった後に端部材を取り付ける必要があり、これは正確な機械仕上げと精度管理が必要となり、ひいてはコスト高につながる。

コスト的に有利なCPRの複合材/金属材継ぎ手を考えるにあたって、プロダクションライザーにかかる負荷の種類が最大の要素となるが、ライザーには主として軸方向の引張り荷重と内圧及び外圧両面の圧縮荷重が働くと考えられている。採用された継ぎ手は図3に示す多重トラップロック様式で、各端部材はフィラメントを巻く過程で複合材管の管端に装着される。ねじり負荷が殆ど掛からないため多重トラップロック式がこのCPRに採用された。

Lincoln Composites社は1973年にILAWのプロトタイプロケット用にテーパーキーを使用して以来、この種の航空宇宙用のトラップロック継ぎ手の開発を続けており、当時の物は4590lbs/inのシングルトラップロック継ぎ手であった。1975年にはデュワーフラスコのネックチューブ用にダブルトラップロック継ぎ手を試製作した。この継ぎ手は引張りと曲げ両方の荷重を伝達するものであった。

トラップロック継ぎ手を使用したフライトアクチュエータが1983年には開発/試作された。このアクチュエータは高温環境下で、且つ最大圧力で50,000回、中間圧力では35,000,000回の繰り返し圧力の条件で作動する様に設計された。設計荷重は8,000lbs/inであった。

Lincoln Composites社は1987年にV-22 Osprey向けに荷重伝達構造用チューブを開発した。このチューブはプロペラを水平から垂直へ移行させる2次的手段であり、その継ぎ手に使用されたシングルトラップロック継ぎ手は引張、圧縮、トルクを伝えるものであった。また1987年にはダブルトラップロック継ぎ手を使用したAAWSMミサイル用の発射モータも開発/試作された。

1993年にはダブルトラップロック継ぎ手を使用したERINTロケットモーターケースが開発された。このモーターケースは直径10inで9,000lbs/in以上の継ぎ手荷重下でも使用可能と言う事を実証した。

 

 

 

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