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される。この種の分析には、人命の価値を設定する必要があり、そしてこの数値にはかけ離れた食い違いの余地が認められるが、この産業では、約2百万米ドルと決めてきたように思われる。

不幸にして、圧倒的多数の海洋施設は、10-3から10-5の間の固有のリスク比率を持っているように見受けられ、オペレーターが実際にALARPレベルのリスクを達成してきていることを立証するために費用対効果の評価が求められている。ALARPレベルの正当性を示すために、まず人命損失に繋がる事故各々の発生確立を計算し、各事故が原因となる被害を評価することにより、基礎リスクを設定する必要がある。それから、基礎ケースの事故各々の人命損失リスクは、全基礎ケースのリスクを求めるために合計されることとなる。基礎ケースを決めてしまえば後は、軽減可能と思われる各対策の費用を見積もり、費用対効果の比率を算定するためにリスクの減少を計算しなければならない。その比率が高すぎる場合には、軽減策は合理的に実行可能でなく、もはや検討する必要がない。評価する人が軽減策についてもはや思いつかない時には、当然、ALARPレベルが論証されたことになる。

このアプローチの困難さについて明確にされるべきである。先ず、発生する事故の確率を知ることが必要不可欠である。圧縮機からのガス漏洩の包括的な確率を見積もるために使用することのできるデータがあるかもしれないが、そのようなデータはめったに特定のものではない。例えば、往復圧縮機対遠心圧縮機、2-ケース・2段遠心圧縮機対1-ケース・2段遠心圧縮機又はDresser-Rand Datum D-12R対Dresser-Rand 272B等に対して異なった見積もりを提供したり、また、所定の圧縮機で起こる漏洩の暫定的確率を予測する必要がある時に、より困難にさえなる。異なった大きさの漏洩、異なった配置や周辺環境に関係する設備の位置が大変異なった結果をもたらすように、漏洩の結果の確定は極めて困難である。それ故に、評価過程を手短にしなければならないし、リスク確率はたぶん、真の値に殆ど近似の大きさである。そのような分析を行う経費や分析がプロジェクト全体の時間に与えるインパクトは相当なものになる。

上述の論議は、QRAを方法として誹謗しているのではない。QRAは、 2つの選択肢の間で選択する場合の手助けとして使われる時、有効かつ説得力のある道具であることは認められている。この論議は単に、QRAを基礎とするALARPの方法が、設計の特性や安全管理システムの最適の釣り合いを決定する上で、初めに思われるほど正確ではないことを指摘しようとしている。

このテキストは、ALARPに到達するもう一つの方法、リスク・レベルを正確に算定することが要求されない場合の定性的な方法を示している。このアプローチは、何千ものプラットフォームが操業し、また、北海において直面している職員の退避や回収の問題がずっと厳しくない米国において、徐々に発展してきた。

 

米国における実践(US Practice)

米国内での掘削・生産活動は、連邦規則コード30 CFR 250の中で詳細に規定されるある安全基準を満足することが要求される。これらは殆どの部分、米国石油協会(API:American Petroleum Institute)の仕様と勧告実行策を基本にしている。掘削・生産

 

 

 

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