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どの高度な自動化機器は使用されていない。タイの造船所は生産性向上のために、設計技術や生産技術の充実を必要としている。

 

? 造船政策と造船業の振興

 

2006年末までにタイの保有船腹を13.5百万DWTに拡大する目標が定められている。これを実現するためには、造船業の振興にもかなり力を入れる必要がある。その発展を支援する上で、政府が重要な役割を果さなければならない。政府がこれまでに取った措置は、以下のように要約することができる。

1. 所得税の免除や、造船所用機器の輸入関税引き下げなど、投資振興法による優遇措置。

2. 公認の保税倉庫を設置した造船所を対象に、新造船・修繕船用に輸入される部品、資機材の輸入関税免除。

3. 輸出向けに生産を行うメーカー一般を対象とした、関税法による優遇措置。生産に使用するために輸入された部品や材料にかかる租税の還付。

4. 新旧の別なく、浮ドックに対する輸入関税を1%に引き下げ。

5. タイ輸出入銀行による信用供与。

 

? 将来の展望

 

タイの主要造船企業は、業界の将来について楽観的な見通しを持っている。海上輸送需要の伸びと自国商船隊拡充を図る政府の政策が、造船業の発展にかなりのプラス効果をもたらすものと見込まれる。

造船業発展を支援する新政策は以下のように要約される。

1)既存の造船所の能力拡充、新造船所建設への投資奨励により大型造船所を拡充。

2)大型船の建造。修繕市場の拡大と、外国船主からの受注を図るためのマーケティング活動の実施。

3)技術・人的資源開発の振興。

 

? 結び

 

タイの造船業は、狭い市場、金融支援の不足、地価高騰、国内メーカー、サプライアー、人的資源の不足など多数の問題に、多年にわたって直面してきた。しかし政府の施策により、これらの問題も緩和されつつある。財政措置もさることながら、タイは特にアジア太平洋地域における、情報の交換、技術やノーハウの移転などによる国際協力の重要性を認識している。海外からの援助は、将来において外国船主からの受注を増やすために、タイ造船業の国際競争力を強化、コストを大幅に削減、品質と信頼性を改善するのに役立つ。

タイ造船業は発展の途上にある。能力など一部の側面では満足し得る域に達しているものの、まだまだ改善の余地が残っている。わが国の海事産業を着実に発展させる政策により、タイ造船業の将来には明るい展望が開けている。

 

 

 

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